「親が家で転んで、一人で起き上がれなくなっていた」「転んだとき、どう起こしてあげればいいか分からなかった」。高齢の親を持つ家族から、よく聞く声です。
転んだあとは、あわてて起こさないことがいちばん大切です。けがの確認をしてから、体に負担の少ない順番で起き上がれば、本人の力を使って安全に立ち上がれることも多くあります。訪問リハビリで、実際に床からの起き上がりを練習してきた理学療法士の立場から、家族が知っておきたいことをまとめます。
この記事で分かること
- 転んだとき、最初に確認すること
- すぐに救急車を呼ぶべきとき
- 床から起き上がる5つのステップ
- 起き上がれないときの対応と、ふだんの備え
よくある場面
訪問先でも、ご家族が驚いて両腕を引っぱって起こそうとし、本人もご家族も腰や肩を痛めてしまうケースがあります。高齢の方は骨がもろくなっていることがあり、無理に引っぱると、けがが重くなることもあります。
また、転んだあと一人で起き上がれず、夜から朝までそのままだった方もいます。床に長くいると、体が冷えたり、脱水になったりすることがあります。起き上がり方を知っておくことと、助けを呼べる備えの両方が大切です。訪問リハビリでは、床からの起き上がりを実際に練習することもあります。
転んだとき、最初に確認すること
- 声をかけて、意識がはっきりしているか
- 頭を打っていないか
- 痛いところはないか:特に足の付け根、手首、背中、腰
- 手足が動くか:しびれや、力が入らないところはないか
- 出血していないか
この確認のあいだは、無理に動かさず、楽な姿勢で休んでもらいます。寒い時期は、毛布などをかけて体を冷やさないようにします。
こんなときは、動かさずに救急車を
- 意識がおかしい、呼びかけへの反応がにぶい
- 頭を強く打った、吐き気がある
- 足の付け根や背中が強く痛む、足を動かせない
- 手足がしびれる、力が入らない
- 出血が止まらない
迷うときは、地域の救急相談窓口(救急安心センター #7119 など、地域によって異なります)に相談する方法もあります。
足の付け根の強い痛みは、高齢の方に多い大腿骨の骨折のことがあります。くわしくはこちらで書いています。
床から起き上がる5つのステップ
けががなく、本人が動けそうなときの起き上がり方です。現場で練習している基本の順番を5つにまとめました。

1. 横向きになる
あお向けのときは、ひざを立てて、ゆっくり横向きになります。いきなり上体を起こさないのがポイントです。
2. 腕で押して、横座りになる
下になった腕のひじと手のひらで床を押しながら、上体を起こして横座りになります。
3. 四つばいになる
両手を床について、ひざをついた四つばいの姿勢になります。ここでひと休みしても大丈夫です。
4. 安定した家具に手をつく
いすの座面やベッドなど、動かない、安定した家具の前まで四つばいで移動し、両手をのせます。キャスターつきのいすや、倒れやすい家具は使いません。
5. 片ひざを立てて、ゆっくり立つ
片方のひざを立て、家具に体重をあずけながら、ゆっくり立ち上がります。立ったら、すぐに歩かず、いすに座って休みます。
家族が手伝うときは、腕を引っぱらず、本人の動きに合わせて腰や体を軽く支えます。立ち上がりの介助のコツは、こちらでも書いています。
起き上がれないときは
途中で痛みが出たり、力が入らなかったりして起き上がれないときは、無理をしないでください。床にクッションや毛布を敷き、体を冷やさないようにして、家族や救急に助けを求めます。一人で起こそうとすると、本人も介助する人もけがをすることがあります。
ふだんからできる備え
- 元気なときに、一度練習しておく:床に座る→立つの流れを、家族が見守る中で
- すぐ助けを呼べるように:携帯電話を持ち歩く、見守りサービスを検討する
- 転ばない家にする:段差、コード、敷物、夜の明かりを見直す
- 体を動かす習慣:足の力とバランスを保つ
- 骨を強くする:骨粗しょう症の検査・治療を受ける
健康長寿ネットでも、転倒の予防として、運動、住環境の改善、骨粗しょう症の治療などが挙げられています。
よくある質問
転んだときの起き上がりについて、よく調べられている質問をまとめました。
転んだあと、すぐ起こしてはいけないのですか。
まずは意識、頭を打っていないか、痛いところや動かせないところがないかを確認します。骨折などがあるときに無理に起こすと、けがが重くなることがあるためです。
痛みがなければ、受診しなくても大丈夫ですか。
転んだ直後は痛みを感じにくいこともあります。あとから痛みが強くなる、腫れてくる、歩き方がおかしい、といった場合は受診してください。頭を打った場合は、時間がたってから症状が出ることもあるので、しばらく様子に注意してください。
本人が「大丈夫」と言って、すぐに立とうとします。
あわてて立つと、ふらついてもう一度転ぶことがあります。まずは座った姿勢で少し休んでもらい、けががないか確認してから、ゆっくり立ってもらいましょう。
起き上がりの練習は、どこで教えてもらえますか。
訪問リハビリや通所リハビリで、理学療法士と一緒に練習することができます。実際の家で練習すると、つかまる場所や動く順番を確認できます。
一度転んでから、転ぶのを怖がって動かなくなりました。
転ぶのが怖くなって動く量が減ると、さらに足腰が弱り、転びやすくなってしまいます。安全な場所で少しずつ体を動かすことや、手すりなどの環境づくりで、不安を減らしていくことが大切です。
まとめ
最後に、この記事のポイントです。
- 転んだら、あわてて起こさず、まず確認
- 意識がおかしい、頭を打った、強い痛み、動かせないときは救急へ
- 起き上がりは横向き→横座り→四つばい→家具に手→片ひざ立ち
- 家族は腕を引っぱらず、本人の動きを支える
- 元気なときに練習し、助けを呼べる備えを
転んだときの対応を知っておくと、本人も家族もあわてずにすみます。まずは、親の家で「つかまって立てる家具」がどこにあるか、一緒に確かめてみてください。
参考にした資料
この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年10月確認)。体の状態によって安全な方法は異なります。気になる場合は、医師や理学療法士に相談してください。




