「親に運動してほしいけれど、外を歩くのはもう難しそう」「何をどれくらいやればいいのか分からない」。そんなときにおすすめなのが、いすを使った体操です。
いすに座ったまま、またはいすにつかまってできる体操なら、転ぶ心配が少なく、家の中で毎日続けられます。訪問リハビリで、家でできる体操を毎日のように指導している理学療法士の立場から、家族と一緒にできる5つの体操を紹介します。
この記事で分かること
- 国のガイドがすすめる、高齢者の運動の目安
- いすでできる5つの体操と、回数の目安
- 安全に行うための注意点
- 続けるための、家族の関わり方
よくある場面
訪問先では、そもそも家で体操を続けている方は、あまり多くありません。
続く体操に大切なのは、簡単で、短くて、毎日の生活の中でできることです。まずは「いすに座ったついでに」できるものから始めてみてください。
国のガイドがすすめる、高齢者の運動の目安
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、高齢者に次のような目安が示されています。
- 歩くこと、またはそれと同じくらいの体の活動を1日40分以上(1日約6,000歩以上)
- 筋力トレーニング・バランス運動・柔軟運動などいろいろな運動を週3日以上
- そのうち筋力トレーニングを週2〜3日
- 座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように
ただし、同じガイドでは、個人差をふまえて強度や量を調整し、できるものから取り組むこと、今より少しでも多く体を動かすことが大切とされています。いきなり目安どおりでなくても大丈夫です。
いすでできる5つの体操
訪問リハビリで実際によく使っている体操から、家族と一緒にできるものを5つ選びました。

1. いすから立ち上がる
立ち上がりは、太もも・お尻・体幹を使う、いちばん実用的な筋力トレーニングです。
- いすに浅めに座り、足を少し手前に引く
- おじぎをするように体を前に倒し、ゆっくり立ち上がる
- ゆっくり座る(ドスンと座らない)
- 5〜10回。手を使わないと難しい場合は、机やいすのひじ掛けに手をついて
2. 座ってひざを伸ばす
- いすに深く座り、背すじを伸ばす
- 片方のひざをゆっくりまっすぐ伸ばし、足首を手前に反らす
- 太ももの前に力を入れて3秒止め、ゆっくり下ろす
- 左右それぞれ10回
3. 座って足ぶみ
- いすに座ったまま、ももを交互に軽く持ち上げる
- 背もたれに寄りかかりすぎず、背すじを伸ばして
- 左右合わせて20回。テレビを見ながらでもできます
4. 座ってつま先上げ
つま先を上げる筋肉が弱ると、すり足になり、つまずきやすくなります。
- いすに座り、かかとを床につけたまま
- つま先をゆっくり持ち上げて、ゆっくり下ろす
- 10〜20回
5. つかまってかかと上げ
ふくらはぎの力と、立ったときのバランスをきたえます。
- 動かない安定したいすの背や、台所の流しなどにつかまって立つ
- かかとをゆっくり上げて、ゆっくり下ろす
- 10回。ふらつく場合は、座ってかかとを上げる方法から
安全に行うための注意点
- キャスター付きのいすは使わない。壁ぎわなど安定した場所で
- 息を止めない(数を声に出して数えるのがおすすめ)
- 痛みが出たら中止。痛みが続くときは医師や理学療法士に相談
- 体調が悪い日、熱がある日は休む
- 持病がある場合や、運動を止められている場合は、先に医師に相談
厚生労働省のe-ヘルスネットでも、筋力トレーニングでは息をこらえないこと、休息日を設けること、やりすぎに注意することが挙げられています。
続けるための、家族の関わり方

体操は、続けることがいちばん大切です。家族にできる工夫を紹介します。
- 時間を決める:朝のテレビ体操のあと、昼食前など、毎日の習慣にくっつける
- 一緒にやる:家族も一緒だと続きやすい。電話やビデオ通話で一緒にやる方法も
- 記録する:カレンダーに○をつけるだけでも、続ける力になります
- ほめる:回数より、続けていることをほめる
ひとりで続けるのが難しい場合は、デイケアや地域の体操教室に参加するのもおすすめです。地域の教室は、地域包括支援センターで教えてもらえます。
体の衰えのサインや、動かないことで弱る仕組みについては、こちらで書いています。ひざに痛みがある場合は、こちらの体操も参考にしてください。
- フレイルとは|高齢の親に気づきたい5つのサインと、家族ができる予防
- サルコペニアとは|高齢の親の筋肉の衰えに気づく3つのチェックと予防
- ロコモとは|高齢の親の「立つ・歩く」の衰えに気づく7つのチェックと予防
- 廃用症候群とは|寝込んだあと弱る前に、家族が気づきたいサインと防ぎ方
- 高齢の親のひざの痛み|変形性膝関節症の進み方と、家でできる工夫・体操
よくある質問
高齢者のいす体操について、よく調べられている質問をまとめました。
毎日やったほうがいいですか。
立ち上がりなどの筋力トレーニングは、厚生労働省のガイドでは週2〜3日が目安とされ、休息日を設けることも大切とされています。足ぶみやつま先上げなど軽いものは、毎日の習慣にしてもかまいません。
回数がこなせません。
回数は目安です。まずは1〜2回からでも大丈夫です。少しずつ増やしていきましょう。
ひざや腰が痛いのですが、やっても大丈夫ですか。
痛みが強くなる体操は中止してください。どの体操が合うかは、医師や理学療法士に相談するのがおすすめです。
立ち上がりが手を使わないとできません。
手を使って大丈夫です。机やひじ掛けに手をつきながら行い、慣れてきたら手の力を少しずつ減らしていきましょう。
歩くのとどちらが大切ですか。
どちらも大切です。国のガイドでも、歩くなどの体の活動と、筋力トレーニングなどいろいろな運動を組み合わせることがすすめられています。外を歩くのが難しい場合は、いすの体操から始めてみてください。
まとめ
最後に、この記事のポイントです。
- 国のガイドでは、高齢者は1日40分以上の体の活動と、週2〜3日の筋力トレーニングが目安
- ただしできるものから、今より少しでも多く
- いすでできる5つ:立ち上がり、ひざ伸ばし、足ぶみ、つま先上げ、かかと上げ
- 息を止めない、痛みが出たら中止、安定したいすで
- 時間を決める・一緒にやる・記録する・ほめるで続ける
体操は、特別なことをしなくても、いすひとつから始められます。まずは今日、親と一緒に1つだけやってみてください。
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参考にした資料
この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。体の状態は人によって異なるため、持病がある場合や痛みがある場合は、医師や専門職に相談してください。




