「お風呂用のいすを買いたいけれど、介護保険は使えるの?」「ポータブルトイレは借りるもの?買うもの?」。介護が始まると、こうした疑問がよく出てきます。
介護保険の福祉用具は、レンタルが基本です。ただ、お風呂やトイレで使う物など、人が使ったあとに貸し出すのが向かない用具は、「買う」ことで介護保険が使えます。
この記事では、介護保険で買える福祉用具の種類と、年10万円の上限、申請の流れと注意点をまとめます。
この記事で分かること
- 介護保険で「買う」福祉用具とは
- 買える福祉用具の種類
- 年10万円の上限と自己負担
- 申請の流れと支払い方法
- 買う前に確かめたい4つのポイント
介護保険で「買う」福祉用具とは
介護保険では、福祉用具を借りる「福祉用具貸与」のほかに、買う費用の一部が支給される「特定福祉用具購入費の支給」というしくみがあります。要支援1・2、要介護1〜5と認定された人が使えます。
対象になるのは、一般に、入浴や排泄に使う用具など、ほかの人が使ったあとに貸し出すことに心理的な抵抗がある物や、使ううちに形が変わってしまう物です。
買える福祉用具の種類
杉並区や中央区の案内によると、買える福祉用具(特定福祉用具)は次の6種類です。
- 腰掛便座(洋式便器の高さを補うもの、立ち上がりを補助するもの、ポータブルトイレなど)
- 入浴補助用具(入浴用いす、浴槽用手すり、浴槽内いす、入浴台、浴室内すのこ、浴槽内すのこ、入浴用介助ベルト)
- 自動排泄処理装置の交換可能部品
- 簡易浴槽
- 移動用リフトのつり具
- 排泄予測支援機器
このほか、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、単点杖(松葉づえを除く)、多点杖の4つは、借りるか買うかを選べる「選択制」の対象です。選ぶときは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員から説明を受けて決めます。
年10万円の上限と自己負担
上限は、要介護度に関係なく、1年間(4月〜翌年3月)で10万円です。この範囲の購入費のうち、自己負担は1〜3割で、残りの9〜7割が介護保険から支給されます。負担の割合は、「介護保険負担割合証」で確かめられます。
10万円を超えた分は、全額が自己負担になります。1回の購入が10万円に届かなければ、残りの枠は同じ年度のうちに使えます。
また、同じ種目の物を再び買うことは、原則として対象になりません。ただし、壊れたときや体の状態が変わったときは、対象になることがあります。その場合は、買う前に市区町村へ相談します。
申請の流れと支払い方法
支払い方法には、主に次の2つがあります。どちらが使えるかは、市区町村によって違います。
- 償還払い:いったん全額を事業者に支払い、あとで申請して、介護保険の分(9〜7割)を受け取る
- 受領委任払い:自己負担分(1〜3割)だけを事業者に支払う。市区町村に登録した事業者に頼む必要があり、買う前の申請がいる場合もある
申請には、一般に、申請書、本人名義の領収書、用具のパンフレットなど金額が分かるもの、福祉用具販売計画書の写しなどが必要です。すのこや固定用スロープでは設置前後の写真、排泄予測支援機器では医学的な所見が分かる書類が求められることもあります。
流れは、おおむね次のとおりです。
- ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談する
- 指定を受けた福祉用具販売事業者で、福祉用具専門相談員と一緒に選んで買う
- 必要な書類をそろえて、市区町村に申請する
- 市区町村の審査のあと、支給される
買う前に確かめたい4つのポイント

1. 対象の品目か確かめる
介護保険で買えるのは、上の6種類と選択制の4品目だけです。同じお風呂用品でも、対象外の物があります。迷ったら、買う前にケアマネジャーや事業者に確かめましょう。
2. 指定の事業者で買う
対象になるのは、都道府県の指定を受けた特定福祉用具販売事業者から買った物だけです。杉並区の案内では、指定事業者の商品であっても、福祉用具専門相談員の助言を受けずにインターネットや通信販売で買った物は対象外とされています。
3. 年10万円の枠を考える
1年間の枠は10万円です。お風呂の用具とトイレの用具を同じ年に買う予定があるなら、どれを先に買うか、ケアマネジャーと相談しておくと安心です。
4. 支払い方法を確かめる
償還払いでは、いったん全額を立て替えます。受領委任払いが使えるか、使えるならどの事業者が登録しているかを、先に市区町村やケアマネジャーに確かめておくと、手元のお金の負担を減らせます。
現場で見ていること

訪問リハビリで伺うお宅で、介護保険で買った用具としてよく見かけるのは、シャワーチェアです。介護保険で買えることを知らずに全額自分で払っていた、というご家族や、先にお店や通販で買って合わなかった、というケースは、訪問先ではあまり見かけません。買う前に、ケアマネジャーや福祉用具の担当者に相談しておくと安心です。
お風呂やトイレは、転びやすい場所です。用具を選ぶときは、本人が実際に座ったり立ったりする動きを見ながら決めるのがおすすめです。私も、用具を選ぶときは、ご本人が座ったり立ったりする動きを見て、気づいたことを担当者に伝えています。理学療法士や作業療法士が関わっている場合は、一緒に相談してください。
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よくある質問
Q. 要支援でも買えますか?
A. 買えます。要支援1・2の人も、要介護の人と同じ種類の用具が対象です。
Q. 自分で通販で買った物は、あとから申請できますか?
A. 原則として対象になりません。指定を受けた事業者から、福祉用具専門相談員の助言を受けて買う必要があります。
Q. 10万円を超えたらどうなりますか?
A. 超えた分は全額が自己負担になります。翌年度(4月から)は、また10万円の枠が使えます。
Q. 壊れたら買い直せますか?
A. 同じ種目の再購入は原則として対象外ですが、壊れたときや体の状態が変わったときは対象になることがあります。買う前に、ケアマネジャーを通して市区町村に相談しましょう。
まとめ
- 介護保険では、お風呂やトイレの用具など6種類を、年10万円まで1〜3割の負担で買える
- 固定用スロープ、歩行器、単点杖、多点杖は、借りるか買うかを選べる
- 指定の事業者で、福祉用具専門相談員の助言を受けて買うことが条件
- 支払い方法や必要な書類は市区町村によって違うので、買う前に確かめる
手続きは市区町村ごとに少しずつ違います。買う前に、ケアマネジャーや地域包括支援センターに一声かけておくと安心です。
参考にした資料
- 杉並区「居宅介護(介護予防)特定福祉用具購入費の支給」(2026年10月確認)
- 中央区「福祉用具購入費の支給」(2026年10月確認)
- WAM NET「特定福祉用具販売」(2026年10月確認)



