「親が入院して、退院後の生活の準備をしないといけない」「通院の付き添いのたびに、有給休暇がなくなっていく」。働きながら親の介護が始まると、仕事との両立に悩む方は多いのではないでしょうか。
仕事を続けながら介護をするために、法律で決められた制度があります。代表的なのが介護休業と介護休暇です。名前は似ていますが、使い方が違います。訪問リハビリで、働きながら親を支える家族と関わってきた理学療法士の立場から、違いと使い方をまとめます。
この記事で分かること
- 介護休業と介護休暇の違い
- そのほかの両立のための制度
- 介護休業中にしておきたいこと
- 令和7年4月からの変更点
介護休業と介護休暇の違い
厚生労働省の資料では、2つの制度の目的が次のように説明されています。
- 介護休業:介護の体制をつくるために、一定の期間まとめて休むもの
- 介護休暇:介護保険の手続きや通院の付き添いなど、その日その時の用事に対応するための休み
おおまかに言うと、まとまった準備は介護休業、日々の用事は介護休暇です。

介護休業
- 日数:対象家族1人につき、通算93日まで
- 分割:3回まで分けて取れる
- 申し出:休み始める2週間前までに会社へ
- お金:雇用保険の条件を満たせば、原則として休業前の賃金の67%の介護休業給付がある
介護休暇
- 日数:1年に5日(対象家族が2人以上なら10日)
- 単位:1日単位のほか、時間単位でも取れる
- 使い道:通院の付き添い、介護保険の手続き、ケアマネジャーとの打ち合わせなど
- お金:法律での決まりはなく、有給か無給かは会社によって違う
介護休暇は、年次有給休暇とは別に取れる休みです。会社の就業規則で、取り方や給料の扱いを確認しておきましょう。
どんなときに使えるの?
対象となる家族は、配偶者、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。一緒に住んでいなくても対象になります。
また、家族が2週間以上にわたって常に介護が必要な状態であることが条件です。厚生労働省の判断基準では、要介護2以上であるか、歩く・トイレ・着替えなどの項目で一定以上の手助けが必要な場合とされています。要介護認定を受けていなくても使えることがあるので、まずは会社に相談してみましょう。
会社から、状態を確かめる書類を求められることもあります。介護保険の被保険者証や認定結果の通知のほか、医師や看護師、理学療法士などが書いた書類も、証明に使える例として挙げられています。
そのほかの両立のための制度
介護休業・介護休暇のほかにも、次のような制度があります。介護休業以外は、組み合わせて使うことができます。
- 残業の免除:所定の労働時間をこえる仕事をしないよう請求できる
- 時間外労働の制限:残業を1か月24時間、1年150時間までに制限できる
- 深夜業の制限:夜10時から朝5時までの仕事をしないよう請求できる
- 短時間勤務など:短時間勤務、フレックスタイム、始業・終業時刻の変更などのうち、会社が用意したものを、利用開始から3年以上の期間で2回以上使える
介護休業中にしておきたいこと
介護休業は、自分が介護をするための休みというより、仕事に戻ったあとも介護が続けられるよう、準備をする期間です。93日は長いようで、すぐに過ぎてしまいます。理学療法士として、この期間に進めておくとよいと思うことをまとめました。
- 要介護認定の申請:まだなら、地域包括支援センターや市区町村の窓口へ
- ケアマネジャー探し:ケアプランを一緒に考えてくれる相手を決める
- サービスの見学:デイサービス、デイケア、ショートステイなど
- 家の中の準備:手すり、段差、ベッドまわりなど、転ばない環境を整える
- 家族の役割分担:きょうだいや親せきと、誰が何をするか話し合う
特に、退院して家に帰るときは、家の中で転ばずに動けるかがとても大切です。病院のリハビリ職やケアマネジャーに、家の段差や手すりのことも相談してみてください。
- 地域包括支援センターとは|高齢の親のことで最初に相談する場所。できることと探し方
- ケアマネジャーとは|高齢の親の介護のまとめ役。選び方と、合わないときの変え方
- 介護保険の住宅改修|手すり・段差は20万円まで。工事の前に知りたい流れと注意点
令和7年4月からの変更点
令和6年に法律が改正され、令和7年4月から次のことが変わりました。
- 介護休暇:入社6か月未満の人も取れるようになった
- 会社からの説明:介護に直面したと申し出た人に、会社は制度を個別に知らせ、使うかどうかを確認しなければならない
- 早めの情報提供:40歳になるころなど、介護に直面する前の段階で、会社が制度を知らせる
- テレワーク:介護をしている人がテレワークを選べるようにすることが、会社の努力義務になった
介護のことは、職場で言い出しにくいかもしれません。でも、申し出たことで会社から不利な扱いを受けることは、法律で禁止されています。一人で抱えこまず、早めに相談することが大切です。
よくある質問
介護休業・介護休暇について、よく調べられている質問をまとめました。
パートや契約社員でも取れますか。
取れます。介護休業は、有期雇用の方の場合、契約の期間について条件があります。介護休暇は、有期雇用でも別の条件はありません。ただし、週の労働日数が2日以下の方などは、会社の労使協定で対象外になっていることがあります。
介護休業給付は、どこに申請しますか。
雇用保険の給付なので、ハローワークが窓口です。多くの場合は会社が手続きをしてくれるので、まずは会社の担当部署に相談しましょう。
父と母、それぞれの介護で取れますか。
取れます。介護休業は対象家族1人につき通算93日、介護休暇は対象家族が2人以上なら1年に10日です。
介護休業中に、親の家に泊まりこんでもいいですか。
休業中の過ごし方に決まりはありません。ただ、休業が終わったあとも続けられる形を整えることが目的なので、家族だけでがんばりすぎないようにしましょう。
会社に制度がないと言われました。
介護休業・介護休暇は法律で決められた制度で、会社の規則になくても取ることができます。困ったときは、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。
まとめ
最後に、この記事のポイントです。
- 介護休業は介護の体制をつくるための休み。通算93日・3回まで
- 介護休暇は通院の付き添いなどの用事のための休み。年5日、時間単位でも取れる
- 要介護認定を受けていなくても、状態によっては使えることがある
- 介護休業中は、認定の申請・ケアマネ探し・家の準備を進める
- 令和7年4月から、入社6か月未満でも介護休暇が取れるようになった
介護は、いつ始まるか分かりません。まずは、自分の会社の就業規則で、介護休業・介護休暇の取り方を確認しておきましょう。
参考にした資料
この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年10月確認)。制度の内容は変わることがあります。くわしくは、勤め先の担当部署や、都道府県労働局に確認してください。
- 厚生労働省・都道府県労働局「育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説」(リンク)




