介護保険の住宅改修|手すり・段差は20万円まで。工事の前に知りたい流れと注意点

「トイレに手すりをつけたい」「玄関の段差をなくしたい」。高齢の親の家を直したいと思ったときに使えるのが、介護保険の住宅改修です。

ただ、工事の前に申請しないと、お金が出ないなど、知らないと損をするルールもあります。訪問リハビリの現場で住宅改修に立ち会うこともある理学療法士の立場から、家族が知っておきたいことをまとめます。

この記事で分かること

  • 介護保険で直せる工事と、使える金額
  • 申請から工事までの流れと、注意点
  • 失敗しないために、工事の前に確かめたいこと

工事の前に知っておきたいこと

ご家族がホームセンターで手すりを買ってきて自分でつけた、あるいは、介護保険のことを知らずに先に工事をして、あとから申請できなかった、というケースは、訪問先ではあまり見かけません。

それでも、介護保険の住宅改修は、原則として工事の前に申請が必要です。工事を決める前に、まずケアマネジャーに相談してください。

介護保険の住宅改修とは

介護保険の住宅改修は、要支援・要介護の認定を受けている方が、自宅で安全に暮らすための小さな工事をしたときに、費用の一部が介護保険から支給される仕組みです。

使える金額

北九州市の案内では、支給の上限(支給限度基準額)は20万円で、要介護度に関係なく同じとされています。このうち7〜9割が介護保険から支給され、残りの1〜3割が自己負担です。

  • 20万円の工事で、負担割合が1割の場合:18万円が支給、自己負担は2万円
  • 20万円を超えた部分は、全額自己負担
  • 20万円の枠は、何回かに分けて使うこともできる

また、要介護度が3段階以上重くなったとき(1回だけ)と、引っ越したときには、もう一度20万円の枠が使えるようになるとされています。

介護保険で直せる工事は6種類

対象になる工事は、次の6つです。

  1. 手すりの取付け:トイレ、浴室、玄関、廊下、階段など
  2. 段差の解消:敷居を低くする、スロープをつける
  3. 床や通路の材料の変更:すべりにくい床にする、歩きやすい通路にする
  4. 扉の取替え:開き戸を引き戸などにする
  5. 便器の取替え:和式から洋式にする
  6. 上の工事にともなう工事:手すりをつけるための壁の補強など

工事をしない、置くタイプの手すりや、スロープは、福祉用具のレンタルで用意できることもあります。どちらが合うかも、ケアマネジャーに相談してください。

住宅改修の流れ

一般的な流れを図にまとめます。細かい手続きは市区町村によって違うので、お住まいの市区町村の案内も確認してください。

住宅改修の流れ:1 ケアマネジャーに相談、2 業者が下見・見積もり、3 市区町村に事前申請、4 工事、5 完了の報告・支給

申請には、ケアマネジャーなどが作る住宅改修が必要な理由書や、工事の見積書、改修前の写真などが必要になります。支払い方法も、いったん全額を払ってあとで支給される方法と、はじめから自己負担分だけを払う方法があり、市区町村によって異なります。

いちばん大事な注意点

北九州市の案内では、工事を始める前に、必ず事前申請が必要で、申請の前に始めた工事は支給の対象にならないとされています。業者に急かされても、申請が通るまで工事は始めないでください。

失敗しないために、工事の前に確かめたいこと

ここからは、訪問リハビリの現場で住宅改修に関わるときに見ているポイントです。

1. 本人が実際に動いてみる

手すりの位置や高さは、図面だけで決めると合わないことがあります。本人に実際にその場所で立ったり座ったりしてもらい、どこに手を置くと動きやすいかを確かめてから決めます。

トイレの手すりは、位置で使いやすさが大きく変わります。

2. 今だけでなく、少し先の体も考える

今は伝い歩きでも、半年後には歩行器を使っているかもしれません。通路の幅や、段差の解消が必要になりそうかも含めて考えておくと、あとからやり直す手間が減ります。

3. リハビリの専門職の意見も聞く

訪問リハビリを使っている場合は、担当の理学療法士や作業療法士に動き方を見たうえで意見をもらうのがおすすめです。業者の下見に立ち会ってもらえることもあります。

よく直す場所

住宅改修でよく直す場所は、次のとおりです。

  • トイレ:立ち座りの手すり、和式から洋式へ
  • 浴室:浴槽をまたぐ・立ち上がるための手すり、すべりにくい床
  • 玄関:上がりかまちの縦手すり、段差の解消
  • 廊下・寝室からトイレまで:伝い歩きのための手すり

家の中で転びやすい場所や、夜のトイレ、お風呂での立ち上がりについては、こちらで書いています。

置くタイプの手すりや歩行器などを介護保険で借りる方法と、要介護認定の申請については、こちらで書いています。

住宅改修の相談先になる地域包括支援センターやケアマネジャーについては、こちらで書いています。

よくある質問

介護保険の住宅改修について、よく調べられている質問をまとめました。

要支援でも住宅改修は使えますか。

使えます。要支援・要介護の認定を受けていれば対象です。まだ認定を受けていない場合は、まず地域包括支援センターに相談してください。

工事のあとで申請することはできますか。

原則としてできません。工事を始める前に、市区町村への事前申請が必要です。

20万円は1回で使い切らないといけませんか。

何回かに分けて使うことができます。たとえば、まずトイレの手すりをつけ、あとで玄関の段差を直す、という使い方もできます。

賃貸住宅でも住宅改修はできますか。

介護保険の対象になることはありますが、工事には家主の承諾が必要です。申請の前に、家主や管理会社に確認してください。

どの業者に頼めばいいですか。

ケアマネジャーに相談すると、住宅改修の経験がある業者を紹介してもらえることが多いです。見積もりの内容や、手すりの位置の決め方を、事前によく確認してください。

まとめ

最後に、この記事のポイントです。

  • 介護保険の住宅改修は、上限20万円で、その7〜9割が支給される
  • 対象は、手すり・段差の解消・床材・扉・便器の取替えなど6種類
  • 工事の前に必ず事前申請。申請前の工事は対象外
  • 手すりの位置は、本人が実際に動いて決める
  • まずはケアマネジャー、認定がなければ地域包括支援センターに相談

手すりひとつでも、つける位置が合えば、毎日の動きがぐっと楽になります。「ここで困っている」という場所を、まずは家族で書き出してみてください。

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参考にした資料

この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。制度の細かい手続きは市区町村によって異なるため、お住まいの市区町村の案内もあわせて確認してください。

理学療法士 山下康希

この記事を書いた人

山下 康希|理学療法士
回復期リハビリテーション病院を経て、いまは訪問リハビリでご自宅に伺っています(ひと月およそ120件)。現場で見てきたことと公的な資料をもとに、転倒予防・痛み・住まいの工夫・介護保険など、ご家族が今日から試せることを書いています。

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