玄関の段差で転ばないために|上がりかまちの手すり・式台と、靴のはき方

「玄関の段差をまたぐのが、つらそうになってきた」「靴をはくときに、ふらついて壁に手をついている」。玄関は、毎日の外出で必ず通る場所なのに、見落とされやすい危ない場所です。

日本の家の玄関には、上がりかまち(土間と床の間の段差)があることが多く、高齢の方にとっては大きな段差になります。訪問リハビリで、家の玄関での出入りを一緒に練習することもある理学療法士の立場から、家族が見直したいポイントをまとめます。

この記事で分かること

  • 玄関で転びやすい理由
  • 玄関を安全にする4つの工夫
  • 段差の上り下りと靴のはき方のコツ
  • 介護保険で使える住宅改修・福祉用具

よくある場面

訪問先でも、立ったまま靴をはこうとして、片足立ちでふらつくケースです。靴に足を入れる一瞬、体を支えるものがなく、そのまま土間に転んでしまうことがあります。

もうひとつは、段差を下りるときに、つかまる場所がなく、下駄箱や壁に手をついているケースです。つかまる場所が決まっていないと、毎回違うところに手をつき、バランスをくずしやすくなります。

玄関での事故は少なくない

東京消防庁の救急搬送のデータでは、令和6年に高齢の方が住まいの中で「ころぶ」事故で運ばれた場所は、居室・寝室に次いで玄関・勝手口が2番目に多い結果でした。

東京消防庁は、玄関の事故を防ぐために、敷居につまずかないよう、体力をつけて、つま先を上げてすり足を改善することを呼びかけています。

玄関を安全にする4つの工夫

現場で、玄関を見てまず確認していることを4つにまとめました。

玄関を安全にする4つの工夫:1 縦の手すり(段差の横につかまる場所)、2 式台(高い段差を2段に分ける)、3 いすに座って靴をはく(片足立ちをしない)、4 足元を明るく、物を置かない

1. 縦の手すりをつける

上がりかまちの横に、縦向きの手すりがあると、段差の上り下りで体を引き上げたり、支えたりしやすくなります。つかまる場所が決まるので、動きも安定します。

2. 段差を小さくする(式台)

上がりかまちが高い場合は、途中に式台(しきだい)と呼ばれる踏み台を置いて、1段を2段に分けると、上り下りが楽になります。

3. いすに座って靴をはく

玄関に小さないす(ベンチ)を置いて、座って靴をはくようにすると、片足立ちでふらつくことがなくなります。立ち上がるときにつかまれる手すりが近くにあると、さらに安心です。

4. 足元を明るく、物を置かない

土間に靴や荷物が置いてあると、足を下ろす場所がなくなります。よくはく靴だけを出しておく、足元を照らす明かりをつける、といった工夫も大切です。

段差の上り下りのコツ

  • 段差に体の正面を向ける:横向きのまま上り下りしない
  • 手すりを持ってから、足を動かす
  • 上がるときは、よいほうの足から
  • 下りるときは、痛いほうの足から
  • 靴をはいたら、一度止まってから立ち上がる

足を出す順番は、階段と同じ考え方です。くわしくはこちらで書いています。

靴そのものが合っていないと、段差でつまずきやすくなります。かかとが脱げやすい靴は、玄関でも危ないので注意してください。

介護保険で使えるもの

厚生労働省の通知では、介護保険の住宅改修の対象として、玄関に転倒予防や移動のためにつける手すりや、玄関の段差の解消が挙げられています。工事をしない置くタイプの手すりは、福祉用具のレンタルの対象になります。

  • 住宅改修:壁につける手すり、段差の解消など(工事をするもの)
  • 福祉用具レンタル:置くタイプの手すり、スロープなど(工事をしないもの)
  • どちらも:要介護認定を受けていることが前提。先にケアマネジャーに相談

賃貸住宅で壁に穴をあけられない場合は、置くタイプの手すりが役立ちます。どの方法が使えるか、どちらが合うかは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談してください。

よくある質問

玄関の段差について、よく調べられている質問をまとめました。

手すりは縦と横、どちらがいいですか。

段差の上り下りでは、体を引き上げたり支えたりしやすい縦の手すりがよく使われます。玄関から廊下へ歩いていく部分には、横の手すりが合うこともあります。どこに、どの向きでつけるかは、実際に動いてもらって決めるのがおすすめです。

手すりの高さはどれくらいですか。

縦の手すりは、段差の上に立ったときと下に立ったときの両方で、にぎりやすい位置になるよう長めにつけることが多いです。体の大きさや動き方で変わるので、本人に実際に持ってもらって決めてください。

式台は、どこで手に入りますか。

工事をして固定するものは住宅改修、置くだけのものは福祉用具として扱われることがあります。市区町村によって取り扱いが違う場合があるので、ケアマネジャーに確認してください。

玄関にいすを置く場所がありません。

折りたためるいすや、壁につける折りたたみ式のいすもあります。まずは、下駄箱に手をついて座れるくらいの高さのものを探してみてください。

段差をなくしてスロープにしたほうがいいですか。

車いすを使う場合はスロープが必要になりますが、歩ける方にとっては、ゆるやかでないスロープはかえって滑りやすいこともあります。今の歩き方に合う方法を、専門職と一緒に考えてください。

まとめ

最後に、この記事のポイントです。

  • 玄関は、住まいで転ぶ事故が2番目に多い場所
  • 縦の手すり・式台・座って靴をはくいす・足元の明るさを見直す
  • 段差は体の正面を向けて、手すりを持ってから動く
  • 壁につける手すりは住宅改修、置くタイプは福祉用具レンタル
  • 工事の前に、ケアマネジャーに相談

玄関が安全になると、外出が気軽になり、体を動かす機会も増えます。まずは、親が靴をはくとき、どこに手をついているかを見てみてください。

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参考にした資料

この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。介護保険の細かな取り扱いは市区町村によって異なる場合があるため、ケアマネジャーや市区町村の窓口に確認してください。

  • 東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故」(リンク)
  • 厚生労働省「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」(リンク)
理学療法士 山下康希

この記事を書いた人

山下 康希|理学療法士
回復期リハビリテーション病院を経て、いまは訪問リハビリでご自宅に伺っています(ひと月およそ120件)。現場で見てきたことと公的な資料をもとに、転倒予防・痛み・住まいの工夫・介護保険など、ご家族が今日から試せることを書いています。

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