高齢の親の階段の上り下り|「上りはよい足、下りは悪い足」と手すりのコツ

「階段の上り下りが、前よりゆっくりになった」「手すりにしがみつくように下りている」。家に階段がある高齢の親を見て、心配になったことはありませんか。

階段は、家の中でも大きなけがにつながりやすい場所です。一方で、足の出し方や手すりの使い方を少し変えるだけで、ぐっと安全になります。訪問リハビリで、実際の家の階段で練習をしてきた理学療法士の立場から、家族に知ってほしいコツをまとめます。

この記事で分かること

  • 階段での事故が起きやすい理由
  • 上り・下りで足を出す順番
  • 手すり・杖の使い方
  • 家の階段で見直したいこと

よくある場面

訪問先では、上りより下りのほうが恐怖心が強い方が多い印象です。下りは体が前に落ちるように動くため、足を踏み外すと、そのまま下まで落ちてしまうことがあります。

また、片方のひざが痛い方が、痛い足から先に階段を上ろうとしているケースもあります。足を出す順番を変えるだけで、痛みも、ふらつきも軽くなることがあります。そういう方には、私から足を出す順番をお伝えして、実際の家の階段で一緒に練習しています。

階段での事故は多い

東京消防庁の救急搬送のデータでは、高齢の方の日常生活の事故は「ころぶ」が8割以上と最も多く、次に多いのが「落ちる」事故です。令和6年の「落ちる」事故は約8割が住まいで起きていて、原因で最も多いのが階段でした。

東京消防庁は、階段の事故を防ぐために手すりや滑り止めをつけることを呼びかけています。

足を出す順番のコツ

片方の足が痛い、力が入りにくい、というときは、足を出す順番を決めておくと安全です。現場でお伝えしている基本の順番をまとめました。

階段の上り下りのコツ:1 上りはよいほうの足から、2 下りは痛いほうの足から、3 一段ずつ両足をそろえる、4 家族は本人より一段下で見守る

上るときは「よいほうの足」から

上るときは、痛くない・力の入るほうの足を先に上の段にのせます。体を持ち上げる力が必要なので、強いほうの足にまかせます。そのあと、痛いほうの足をそろえます。

下りるときは「痛いほうの足」から

下りるときは反対に、痛いほうの足を先に下の段に下ろします。体を支えながらゆっくり下ろす役目は、上の段に残る強いほうの足にまかせます。そのあと、よいほうの足をそろえます。

覚え方は「上りはよい足、下りは悪い足」です。ひざの痛みがある方には、とくに役立ちます。

一段ずつ、足をそろえる

ふらつきがある方は、一段ごとに両足をそろえてから次の段へ進みます。1歩ずつ交互に上るより時間はかかりますが、そのほうが安全です。

手すり・杖の使い方

  • 手すりは、体の少し前をにぎる:手より体が前に出ないようにする
  • 下りるときは、手すりを先にすべらせる:手→足の順に動かす
  • 両側に手すりがあると安心:上りも下りも、強いほうの手で持てる
  • 杖は、手すりと反対の手に:手すりがある側は手すりを使う
  • 杖を使う方も、順番は同じ:上りは杖・よい足が先、下りは杖・悪い足が先

杖の長さが合っていないと、階段ではとくに不安定になります。杖の選び方や長さの合わせ方は、こちらで書いています。

家の階段で見直したいこと

現場で、実際の家の階段を見て確認していることです。

  • 手すり:ない、片側だけ、途中で途切れている
  • 滑り止め:段の先に滑り止めがあるか
  • 明るさ:足元が見えるか。夜は足元灯をつける
  • 段に物を置いていない:新聞や洗濯物を「あとで上に持っていく」置き場にしない
  • スリッパ:脱げやすく、段で引っかかりやすい
  • 階段の上と下:最後の一段で気がゆるみやすい

厚生労働省の通知では、介護保険の住宅改修の「手すりの取付け」は、転倒の予防や移動のために設置するものとされています。階段の手すりも、条件に合えば介護保険が使える場合があります。工事の前に、ケアマネジャーに相談してください。

家の中で階段を使う回数自体を減らす工夫もあります。寝室やトイレを1階にまとめる、よく使う物を1階に置く、などです。健康長寿ネットでは、階段の上り下りが難しい方のための階段昇降機についても紹介されています。

よくある質問

高齢の方の階段の上り下りについて、よく調べられている質問をまとめました。

階段の上り下りは、運動としてしたほうがいいですか。

階段は、足の力を使うよい運動になります。ただ、ふらつきがある方や、ひざの痛みが強い方には負担が大きいこともあります。まずは手すりを使い、一段ずつ安全にできる範囲で行ってください。

手すりは片側と両側、どちらがいいですか。

両側にあると、上りも下りも強いほうの手で持てるので安心です。片側しかつけられない場合は、下りるときに強いほうの手で持てる側を優先することが多いです。家の形によるので、理学療法士やケアマネジャーに相談してください。

下りるのが怖いと言います。

怖さがある場合は、無理に体の正面を向いて下りなくても大丈夫です。手すりを両手で持って横向きに下りる、後ろ向きに下りる、などの方法もあります。どの方法が合うかは、実際の階段で専門職と一緒に確かめるのがおすすめです。

家族はどこに立って見守ればいいですか。

転んだときに支えられるよう、下りるときも上るときも、本人より一段下に立ちます。本人の後ろや上の段にいると、落ちたときに支えられません。

2階で寝ているのですが、1階に移ったほうがいいですか。

夜中のトイレで階段を使う場合は、1階で寝るほうが安全なことが多いです。ただ、住み慣れた部屋を変えることが本人の負担になる場合もあるので、家族と本人でよく話し合って決めてください。

まとめ

最後に、この記事のポイントです。

  • 高齢の方の「落ちる」事故で、最も多い原因は階段
  • 上りはよい足から、下りは悪い足から
  • ふらつく方は、一段ずつ両足をそろえる
  • 見守る家族は、本人より一段下に立つ
  • 手すり・滑り止め・明るさ・段に物を置かないを見直す

階段は、コツを知っていれば、これからも安全に使い続けられます。まずは、親が階段を下りるときに、どちらの足から出しているかを見てみてください。


参考にした資料

この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。体の状態によって安全な方法は異なります。気になる場合は、医師や理学療法士に相談してください。

  • 東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故」(リンク)
  • 厚生労働省「介護保険の給付対象となる福祉用具及び住宅改修の取扱いについて」(リンク)
  • 健康長寿ネット(長寿科学振興財団)「介護保険の福祉用具:階段昇降機」(リンク)
理学療法士 山下康希

この記事を書いた人

山下 康希|理学療法士
回復期リハビリテーション病院を経て、いまは訪問リハビリでご自宅に伺っています(ひと月およそ120件)。現場で見てきたことと公的な資料をもとに、転倒予防・痛み・住まいの工夫・介護保険など、ご家族が今日から試せることを書いています。

→ プロフィールを見る

Instagram・Threads・X・Facebookでも、親の転倒予防のヒントを発信しています。