大腿骨の骨折のあと|手術から家に帰るまでの流れと、家族が準備したいこと

「親が転んで、足の付け根を骨折した」「手術はうまくいったけれど、また歩けるようになるのか心配」。高齢の方の骨折で多いのが、太ももの付け根の骨(大腿骨の付け根)の骨折です。

この骨折は、手術のあとのリハビリと、家に帰ってからの過ごし方で、その後の生活が大きく変わります。回復期リハビリテーション病院から訪問リハビリへ、病院と家の両方でリハビリに関わってきた理学療法士の立場から、家族が知っておきたい流れと注意点をまとめます。

この記事で分かること

  • 大腿骨の付け根の骨折とは
  • 手術から家に帰るまでの流れ
  • 家に帰る前に準備したいこと
  • 家に帰ってから家族が気をつけたいこと

よくある場面

訪問先では、家の中でちょっとつまずいたり、尻もちをついたりしただけで、骨折していたケースが時々あります。本人は「たいしたことない」と言っても、足の付け根が痛くて立てない、足に体重がかけられないときは、この骨折を疑って受診が必要です。

一方で、退院したあとに「転ぶのが怖い」と動かなくなる方は、訪問先ではあまり多くありません。むしろ、退院後も自分から動く方が多い印象です。それでも、骨折の治療は退院で終わりではありません。家での動き方を整えていくことが大切です。

大腿骨の付け根の骨折とは

太ももの骨(大腿骨)の付け根の部分の骨折で、骨の折れた場所によって頚部(けいぶ)骨折と転子部(てんしぶ)骨折などに分けられます。

日本臨床整形外科学会は、年齢とともに骨がもろくなり(骨粗しょう症)、足腰が弱くなって転びやすくなるため、ちょっとした転倒でこの骨折が起こると説明しています。さらに、高齢の方の骨折のうち、「寝たきり」になる最大の原因がこの骨折だとされています。

骨折から家に帰るまでの流れ

骨折から家に帰るまで:1 手術(できるだけ早く)、2 早めに起きて歩く練習、3 リハビリを続ける、4 家の準備をして退院、5 家でもリハビリと骨の治療を続ける

1. 手術

多くの場合、手術で治療します。日本臨床整形外科学会によると、骨の折れ方によって、ボルトやピン、金属の棒で骨を固定する手術や、骨の頭の部分を人工のものに入れ替える手術(人工骨頭置換術)などが選ばれます。診療ガイドラインでも、早く手術をすることの大切さが示されています。

2. 早めに起きて、歩く練習

同じく日本臨床整形外科学会では、手術のあと2〜3日以内にベッドを離れ、歩く練習などのリハビリを始めるとされています。寝ている時間が長くなると、筋力や体力が一気に落ちてしまうからです。

3. リハビリを続ける

手術をした病院からリハビリを専門にする病院(回復期リハビリテーション病棟など)に移って、リハビリを続けることもあります。診療ガイドラインでも、入院中の多職種によるリハビリや、退院後もリハビリを続けることが取り上げられています。

4. 家の準備をして退院

退院が近づいたら、家の中で安全に動けるように準備をします。くわしくは次の章で書いています。

5. 家でも続ける

家に帰ってからも、リハビリと、骨を強くする治療(骨粗しょう症の治療)を続けることが大切です。診療ガイドラインでは、骨折のあとの2回目の骨折を防ぐことも大事なテーマとされています。

家に帰る前に準備したいこと

退院前に、家族で確認しておきたいことをまとめます。

  • 病院のリハビリを見学する:どこまで歩けるか、どんな道具を使っているかを見ておく
  • 家の中の動く道を確かめる:寝室からトイレ、洗面所、玄関まで
  • 手すり・段差:必要なところに手すりをつける、段差をなくす(住宅改修)
  • ベッドやいすの高さ:低すぎると立ち上がりにくい
  • 歩行器・杖:病院で使っていたものと同じ種類を用意する
  • 要介護認定:まだなら、退院前に申請しておく

手すりの工事や段差の解消は、介護保険の住宅改修を使える場合があります。歩行器や杖は、病院のリハビリ担当者と相談して選んでください。

家に帰ってから家族が気をつけたいこと

  • 動く量を減らさない:転ぶのが怖くても、安全な範囲で毎日歩く
  • 夜のトイレに注意:足元の明かり、ベッドからトイレまでの道を片づける
  • 急がない:電話やチャイムであわてて立ち上がらない
  • 人工骨頭の手術をした方:医師や理学療法士から教わった「してはいけない姿勢」を守る
  • 骨粗しょう症の治療を続ける:薬を自己判断でやめない
  • いつもと違う痛み:手術した足が急に痛む、腫れる、歩けなくなったらすぐ受診

家の中で安全に歩く練習を続けたい場合は、訪問リハビリも使えます。家の環境に合わせた動き方や、転ばないための練習ができます。

また転ばないための見直しや、骨折の原因になりやすい背骨の骨折については、こちらで書いています。

よくある質問

大腿骨の付け根の骨折について、よく調べられている質問をまとめました。

手術をすれば、また歩けるようになりますか。

骨折する前にどれくらい歩けていたか、年齢、持病、リハビリの経過などによって変わります。多くの方が歩く練習を重ねて家に帰りますが、杖や歩行器が必要になることもあります。見通しは担当の医師や理学療法士に聞いてください。

手術をしないという選択はありますか。

体の状態によっては手術をしない治療が選ばれることもありますが、長く寝たままになると体が弱ってしまうため、多くの場合は手術がすすめられます。医師とよく相談してください。

退院後、リハビリはどこで続けられますか。

訪問リハビリ、通所リハビリ(デイケア)、外来のリハビリなどがあります。介護保険を使うサービスは、ケアマネジャーに相談して決めます。

人工骨頭の手術のあと、気をつける姿勢はありますか。

手術の方法によって、脱臼しやすい姿勢(深くしゃがむ、足を内側にひねるなど)があります。どの姿勢に注意が必要かは人によって違うので、担当の医師や理学療法士から教わった内容を守ってください。

また骨折しないか心配です。

転ばないための環境づくりと体づくりに加えて、骨粗しょう症の治療を続けることが大切です。骨の検査や治療について、かかりつけ医や整形外科で相談してください。

まとめ

最後に、この記事のポイントです。

  • 大腿骨の付け根の骨折は、ちょっとした転倒で起こり、寝たきりの大きな原因になる
  • 多くは手術のあと、数日のうちに起きて歩く練習を始める
  • 退院前に、手すり・段差・ベッドの高さ・歩行器や杖・要介護認定を準備する
  • 家に帰ってからも、動く量を減らさず、リハビリと骨の治療を続ける
  • 急に痛む、歩けなくなったときはすぐ受診

骨折のあとも、準備と続けるリハビリで、家での生活に戻ることは十分にできます。まずは退院前に、病院のリハビリの様子を一度見せてもらうところから始めてみてください。

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参考にした資料

この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。治療やリハビリの内容は、骨折の状態や体の状態によって異なります。担当の医師や専門職に確認してください。

  • 日本臨床整形外科学会「大腿骨頚部(近位部)骨折」(リンク)
  • 日本整形外科学会・日本骨折治療学会監修「大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン2021(改訂第3版)」(Minds)(リンク)
理学療法士 山下康希

この記事を書いた人

山下 康希|理学療法士
回復期リハビリテーション病院を経て、いまは訪問リハビリでご自宅に伺っています(ひと月およそ120件)。現場で見てきたことと公的な資料をもとに、転倒予防・痛み・住まいの工夫・介護保険など、ご家族が今日から試せることを書いています。

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