「退院のときに、家でもリハビリを続けてくださいと言われた。でも、リハビリって何をすることなのか、よく分からない」。親の入院や介護をきっかけに、初めてリハビリという言葉に向き合う方は多いと思います。
訪問先では、リハビリを「もっとガツガツ鍛えるもの」と思っている方が多くいます。でも、リハビリは、体の働きを戻すことだけでなく、その人の暮らしを取り戻すための支援です。
この記事で分かること
- リハビリ(リハビリテーション)とは何か
- リハビリを担う3つの職種と、それぞれが得意なこと
- 病気やけがのあとの時期ごとのリハビリと、高齢の親が受けられる場所
- 家族がリハビリに関わるときのコツ
よくある場面
訪問先では、「病院ではリハビリをしていたのに、退院したら何もしていない」という方にお会いすることがあります。
また、リハビリを「もう年だから、今さら」と考えている方もいます。ただ、リハビリは年齢で決まるものではありません。少しの工夫で、暮らしが楽になることもあります。
リハビリとは、暮らしの中の「できる」を支えること
世界保健機関(WHO)は、リハビリテーションを、健康上の問題がある人が、環境との関わりの中で、心身の働きを最大限に高め、生活のしづらさを減らすための支援と説明しています。
ここで大事なのは、「環境との関わりの中で」という部分です。WHOは、リハビリの例として、脳卒中のあとの運動や、ことばの訓練と並んで、高齢者が安全に暮らせるように家を整えることも挙げています。つまり、体を鍛えることだけでなく、手すりをつける、動き方を変える、道具を使うといったことも、リハビリの一部です。
また、WHOは、リハビリは障害のある人や、長く続く病気の人だけのものではないとしています。けがや病気で、一時的に動きにくくなった人も対象です。
リハビリを担う3つの職種

リハビリは、主に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の3つの職種が担っています。それぞれ得意なことが違います。

1. 理学療法士(PT):起きる・立つ・歩く
日本理学療法士協会では、理学療法士を、運動の働きが落ちた人に対してリハビリを行う医療の専門職とし、立つ・起きる・歩くといった、生活の基本となる動きの回復や維持を図ると説明しています。
現場では、寝返りや起き上がり、椅子からの立ち上がり、歩く練習、杖や歩行器の調整などを担当することが多いです。起き上がりの動きの見方は、こちらで書いています。
理学療法士の仕事については、理学療法士とは|何をしてくれる人?家族が知りたい仕事と相談のコツでくわしく書いています。
2. 作業療法士(OT):着替え・トイレ・家事
日本作業療法士協会では、作業療法の「作業」を、日常の生活、家事、仕事、趣味、遊び、人との関わり、休むことなど、人が行うあらゆる活動と説明しています。その人にとって意味のある作業を通して、健康や幸福を目指すのが作業療法です。
現場では、着替えやトイレ、お風呂、料理といった暮らしの動作の練習や、道具の工夫、家の中の環境の見直しを担当することが多いです。
3. 言語聴覚士(ST):話す・聞く・食べる
日本言語聴覚士協会では、言語聴覚士を、ことばによるコミュニケーションに問題がある人を支援する専門職とし、食べることや飲み込むこと(摂食・嚥下)の問題にも対応すると説明しています。
脳卒中のあとにことばが出にくくなった、食事でむせることが増えた、といった場合に関わる職種です。
作業療法士と言語聴覚士の仕事は、それぞれ詳しく書いています。
時期によって、リハビリの目的は変わる
日本理学療法士協会のウェブメディアでは、病気やけがのあとのリハビリを、次のような時期に分けて説明しています。
- 急性期:手術の直後や、病気になってすぐの時期。症状を落ち着かせることを目指す
- 回復期:治療が終わり、日常生活に必要な動きを身につける時期
- 生活期(維持期):退院したあと、家や地域での暮らしに戻っていく時期
- 終末期:心と体、暮らし全体の質を高めるケアを大切にする時期
病院で行うリハビリは、主に急性期や回復期のものです。退院したあとは生活期に入り、家やデイケアなど、暮らしの場でのリハビリに変わっていきます。「退院したらリハビリは終わり」ではなく、目的が変わって続いていく、と考えると分かりやすいと思います。
高齢の親が、家や地域で受けられるリハビリ
介護保険の認定を受けている場合、主に次の2つのサービスでリハビリを受けることができます(厚生労働省「介護サービス情報公表システム」より)。
訪問リハビリテーション
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などが自宅を訪問し、心と体の働きの維持や回復、日常生活の自立に向けたリハビリを行うサービスです。
家で行うので、実際に使っているベッドやトイレ、お風呂、玄関で練習できるのが大きな特徴です。現場では、練習と同時に、手すりの位置や家具の配置、動き方の見直しも一緒に行うことが多いです。
通所リハビリテーション(デイケア)
介護老人保健施設や病院、診療所などに通って、心と体の働きの維持や回復、日常生活の自立に向けたリハビリを行うサービスです。要支援1・2、要介護1〜5の認定を受けた方が対象です。
「デイサービス」と名前が似ていますが、デイサービス(通所介護)は、自宅での自立した暮らしや、孤立感の解消、家族の介護の負担を軽くすることなどを目的としたサービスです。リハビリを中心に受けたい場合は、デイケアを探すと分かりやすいです。
デイケアとデイサービスの違いと選び方は、デイケアとデイサービスの違い|高齢の親に合うのはどっち?選び方の目安で詳しく書いています。
どちらが合うかは、親の体の状態や、外に出られるかどうかで変わります。介護保険を使う場合は、担当のケアマネジャーに相談してください。まだ介護保険の認定を受けていない場合は、地域包括支援センターが相談先になります。
家に来てもらう訪問リハビリの内容や頼み方は、こちらで書いています。
家族がリハビリに関わるときのコツ
ここからは、訪問リハビリの現場で、家族にお願いしていることです。
困っている「場面」を具体的に伝える
「足腰が弱ってきた」よりも、「夜中のトイレで、立ち上がるときにふらつく」「お風呂の浴槽から立てなくなった」のように、いつ、どこで、何に困っているかを伝えてもらえると、練習の内容を決めやすくなります。
目標は「歩けるように」より「どこまで行けるように」
「歩けるようになってほしい」という目標は、分かりやすい反面、どこまでできればよいかがはっきりしません。現場では、「近所のスーパーまで歩いて行けるように」「ひとりでトイレに行けるように」のように、暮らしの中の目標に置きかえて相談することが多いです。
リハビリの時間以外を大切にする
訪問リハビリやデイケアでリハビリを受ける時間は、1週間のうちのわずかな時間です。体が変わるかどうかは、それ以外の時間をどう過ごすかで大きく変わります。練習したことを、ふだんの暮らしの中でも少しずつ続けられるように、担当者と相談してください。歩く量の見方は、こちらで書いています。
よくある質問
リハビリについて、よく調べられている質問をまとめました。
リハビリとマッサージは違うのですか。
違います。リハビリは、体の働きを高めたり、動き方や環境を工夫したりして、暮らしの中でできることを増やすための支援です。体をほぐすことが含まれる場合もありますが、それだけが目的ではありません。
高齢でも、リハビリをする意味はありますか。
あります。WHOは、リハビリを子どもから高齢者まで、日常生活での自立を助けるものとしています。体の働きが大きく戻らない場合でも、動き方や道具、家の環境を工夫することで、暮らしが楽になることは多くあります。
デイサービスとデイケアの違いは何ですか。
デイケア(通所リハビリテーション)は、施設に通ってリハビリを受けることが中心のサービスです。デイサービス(通所介護)は、自立した暮らしや孤立感の解消、家族の負担を軽くすることなどを目的としたサービスです。
訪問リハビリを受けたいときは、どこに相談すればいいですか。
介護保険の認定を受けている場合は、担当のケアマネジャーに相談してください。認定を受けていない場合は、地域包括支援センターや主治医に相談してください。
理学療法士と作業療法士の違いは何ですか。
理学療法士は、起きる・立つ・歩くといった基本の動きを主に担当します。作業療法士は、着替えやトイレ、家事など、暮らしの中の活動を主に担当します。実際には重なる部分も多く、一緒に関わることもあります。
まとめ
最後に、この記事のポイントです。
- リハビリは、体の働きを戻すだけでなく、暮らしの中の「できる」を支えること
- 担う職種は、理学療法士(起きる・立つ・歩く)・作業療法士(暮らしの動作)・言語聴覚士(話す・聞く・食べる)
- 退院したあとも、生活期のリハビリとして続いていく
- 家や地域では、訪問リハビリとデイケアで受けられる
- 家族は、困っている場面と、暮らしの中の目標を伝える
リハビリを考えるときは、まず「親が暮らしの中で、どの場面に困っているか」を書き出してみてください。それが、リハビリの担当者と話すときの一番の手がかりになります。
リハビリを受けたい場合は、主治医や担当のケアマネジャー、地域包括支援センターにご相談ください。
参考にした資料
この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。




