「母が腰が痛いと言っている。でも転んだわけではないし、そのうち治ると言う」。高齢の親のこんな様子に、どこまで心配すればいいのか迷う方は多いと思います。
高齢者の背骨の骨折(圧迫骨折)は、大きく転んでいなくても起こることがあります。訪問リハビリの現場でも、「いつ痛めたか覚えていない」という方に、あとから骨折が見つかることがあります。
この記事で分かること
- 高齢者の圧迫骨折が、どんなきっかけで起こるか
- 家族が気づきたい3つのサイン
- 骨折と分かったあと、家での動き方で気をつけたいこと
よくある場面
現場で多いのは、「重いものを持ってから腰が痛い」「布団から起き上がるときだけ痛がる」といった相談です。本人は「ぎっくり腰みたいなもの」と思っていて、湿布を貼って様子を見ていることもあります。
お宅で様子を見ると、横になっているときは落ち着いているのに、起き上がる瞬間や、立ち上がる瞬間に顔をしかめる方がよくいます。こうした様子が続くときは、一度整形外科で診てもらうことをおすすめしています。
高齢者の圧迫骨折は、小さなきっかけで起こる
日本整形外科学会によると、骨粗しょう症があると、尻もちをついたり、中腰で重いものを持ったりするぐらいのことでも、背骨の骨折が起こることがあります。背骨の体の部分(椎体)がつぶれて、くさび形に変形します。
MSDマニュアル家庭版では、骨粗しょう症のある高齢者の場合、物を持ち上げる、前にかがむ、ベッドから起き上がる、つまずくといった、ごく小さな力で起こることがあり、何をしたときに骨折したのか覚えていないこともあるとされています。
また、骨粗しょう症による圧迫骨折の約3分の2は症状がないとされています。日本整形外科学会でも、痛みが軽いこともあると書かれています。「強い痛みがないから骨折ではない」とは言えない、ということです。
家族が気づきたい3つのサイン
ここからは、訪問リハビリの現場で見ているポイントです。資料にある症状を、家の中で見える様子に置きかえています。

1. 起き上がりや寝返りで、背中や腰を痛がる
横になっているときは平気でも、寝返りや起き上がりの瞬間に痛がる様子です。MSDマニュアル家庭版でも、体を曲げたり、動いたりすると痛みが強くなることがあるとされています。
現場では、布団から起きるまでに時間がかかる、起き上がるときに声が出る、夜中に寝返りがつらくて眠れない、といった話を聞くことが多いです。起き上がりの動きの見方は、こちらで書いています。
2. 長く立っていたり、座っていたりするとつらい
MSDマニュアル家庭版では、長時間立つ、歩く、座るといったことで痛みが強くなることがあるとされています。
家の中では、台所に立っていられる時間が短くなった、食事の途中で横になりたがる、椅子に座るとすぐに背もたれに寄りかかる、といった形で見えることが多い印象です。
3. 背が縮んだ、背中が丸くなった
日本整形外科学会では、骨折がいくつも起こると、背中が丸くなり(円背)、身長が低くなるとされています。痛みがはっきりしないまま、少しずつ背中が丸くなっていく方もいます。
家族が気づきやすいのは、ズボンの丈が長くなった、並んだときの目線の高さが変わった、服の背中がつっぱるようになった、といった変化です。背中の丸さと歩き方の関係は、こちらでも書いています。
こんなときは、早めに受診を

次のような様子があれば、様子を見続けずに整形外科に相談してください。日本整形外科学会では、診断はX線(レントゲン)検査で行い、骨粗しょう症が疑われる場合は骨密度も調べるとされています。
- 腰や背中の痛みが、数日たっても軽くならない
- 起き上がりや寝返りのたびに痛がる
- 転んだ、尻もちをついた、重いものを持ったあとから痛む
- 背が縮んだ、背中が丸くなってきた
- 脚のしびれや力の入りにくさ、尿や便の出にくさ・もれがある
日本整形外科学会では、がんの転移による骨折は、じっとしていても痛む(安静時痛)ことが特徴とされています。横になっていても痛い場合も、早めに受診してください。脚のしびれや力が入らない、尿や便の出方がおかしいといった場合は、急いで医療機関に相談してください。
骨折と分かったら、どんな治療になるか
日本整形外科学会によると、多くは、簡易コルセットなどで固定し、前かがみを避けて、比較的安静にする治療が行われます。3〜4週ほどでほとんどが治るとされています。
MSDマニュアル家庭版では、痛みはふつう約4週間で軽くなり、約12週間で消えるとされています。また、ベッドで安静にするのはごく短い期間にとどめ、できるだけ早く歩くなどの普段の活動に戻ることがすすめられています。早めに動き出すことで、筋力や骨密度の低下を防げるとされています。
コルセットの種類や着ける期間、どのくらい動いてよいかは、骨折の状態で変わります。主治医の指示に合わせてください。つぶれ方が強い場合や痛みが続く場合は、手術が検討されることもあります。
骨折後の家での動き方
ここは訪問リハビリの現場で、主治医の指示の範囲で、家族と一緒に確認していることです。
起き上がりは、横向きになってから
仰向けのまま腹筋で起き上がると、背中が丸まり、背骨に負担がかかります。現場では、いったん横向きになり、脚をベッドから下ろしながら、腕で体を押して起きる方法を練習することが多いです。電動ベッドがあれば、背上げを使うと楽になります。
前かがみ・中腰・重いものを避ける
日本整形外科学会では、治療中は前かがみを禁じるとされています。床の物を拾う、洗濯物をかごから取り出す、低い棚の物を取るといった動作は、膝を曲げてしゃがむか、家族が代わるようにします。よく使う物は、腰より上の高さに置いておくと、前かがみになる場面が減ります。
寝てばかりにならないようにする
痛みが怖くて、ずっと横になっている方もいます。ただ、寝ている時間が長いと、足腰の力が落ち、骨折が治ったあとに立てなくなったり、歩きにくくなったりすることがあります。主治医から許可が出ている範囲で、家の中を歩く、トイレまで自分で歩くなど、少しずつ動く時間を作ってください。
次の骨折を防ぐために
日本整形外科学会では、骨粗しょう症と診断された場合は、骨粗しょう症の治療を行うとされています。MSDマニュアル家庭版でも、骨粗しょう症の薬による治療が挙げられています。1つ骨折がある方は、骨粗しょう症の治療を続けているかを、家族も一緒に確認してください。
また、尻もちや転倒をきっかけに骨折することもあるので、転ばない家づくりも大切です。夜のトイレやふらつきの見方は、こちらで書いています。
圧迫骨折の原因になりやすい骨粗しょう症については、こちらで詳しく書いています。
よくある質問
高齢者の圧迫骨折について、よく調べられている質問をまとめました。
転んでいないのに、圧迫骨折になることはありますか。
あります。骨粗しょう症があると、中腰で重いものを持つ、前にかがむ、ベッドから起き上がるといった小さなきっかけで起こることがあるとされています。何をしたときに骨折したか、覚えていないこともあります。
圧迫骨折は、どのくらいで治りますか。
日本整形外科学会では、3〜4週ほどでほとんどが治るとされています。MSDマニュアル家庭版では、痛みはふつう約4週間で軽くなり、約12週間で消えるとされています。骨折の状態で変わるので、主治医に確認してください。
骨折したら、ずっと寝ていたほうがいいですか。
MSDマニュアル家庭版では、ベッドで安静にするのはごく短い期間にとどめ、できるだけ早く普段の活動に戻ることがすすめられています。どのくらい動いてよいかは、主治医の指示に合わせてください。
コルセットは、市販の腰痛ベルトで代わりになりますか。
圧迫骨折のコルセットは、骨折の場所や状態に合わせて医療機関で作ったり選んだりするものです。自己判断で市販のベルトに替えず、主治医に相談してください。
何科を受診すればいいですか。
背中や腰の痛みで、骨折が心配な場合は整形外科が基本です。脚のしびれや力が入らない、尿や便の出方がおかしいといった場合は、急いで医療機関に相談してください。
まとめ
最後に、この記事のポイントです。
- 高齢者の圧迫骨折は、転んでいなくても起こることがある
- 気づきたいサインは、起き上がりで痛む・長く立つと座るとつらい・背が縮んだ
- 骨折と分かったら、前かがみを避けつつ、寝てばかりにならない
- 起き上がりは、横向きになってから
- 次の骨折を防ぐために、骨粗しょう症の治療と転倒予防を
「腰が痛いけど、転んでいないから大丈夫」と思っていても、骨折が隠れていることがあります。まずは、親が起き上がるところや、台所に立っている時間を、少し気にして見てみてください。
背中や腰の痛みが続く場合は、整形外科などの医療機関や地域包括支援センターにご相談ください。
参考にした資料
この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。




