高齢者のふらつきの原因|家族が見たいのは「いつ起きるか」

朝、ベッドの端に腰かけて立ち上がる前にひと呼吸おく高齢の男性

「最近、父がふらつくことが増えた。年のせいだろうか、それとも病院に行ったほうがいいのだろうか」。親のふらつきに気づいたとき、何から考えればいいのか迷う方は多いと思います。

訪問リハビリの現場でふらつきの相談を受けたとき、まず確かめるのは「いつ、何をしたときにふらつくか」です。立ち上がった直後なのか、食事のあとなのか、歩いて向きを変えたときなのか。それによって、考える原因も、相談先も変わってきます。

この記事で分かること

  • 高齢者のふらつきは、原因が1つではないことが多いこと
  • 「いつふらつくか」で分かる、主な原因の見当
  • すぐに受診したほうがいいサインと、家で見直せること

よくある場面

ふらつきの話は、「転びそうになった」「壁に手をついて歩くようになった」という様子から始まることが多い印象です。

本人に聞くと、「ちょっとめまいがしただけ」「年だから」と答えることがよくあります。一方で、よく話を聞くと、朝起きてすぐだったり、昼ごはんのあとだったり、薬が変わってからだったりと、ふらつく場面に共通点が見つかることがあります。

高齢者のふらつきは、原因が1つではないことが多い

MSDマニュアル家庭版では、高齢者では、明確な1つだけの原因でめまいが起きることはあまりないと説明されています。薬の副作用と、加齢による感覚の衰えが組み合わさって起こることが多いとされています。

また、高齢者の転倒についても、ほとんどの転倒はいくつかの要因が重なったときに起こるとされています。体の状態(バランスや筋力、視力、足の感覚など)、使っている薬、家の中の段差などの環境、急いでいるなどの状況が重なって、転倒につながります。

だからこそ、「年のせい」で片づけずに、ふらつく場面を具体的に見ておくことに意味があります。

「いつふらつくか」で分ける

ここからは、訪問リハビリの現場で話を聞くときの分け方です。診断ではありませんが、受診や相談のときに伝える手がかりになります。

ふらつきは「いつ」で分ける:立ち上がった直後、食事のあと、歩いて向きを変えるとき

1. 立ち上がった直後にふらつく

寝ていた状態や座った状態から立ち上がったとき、数秒から数分、気が遠くなる、ふらつく、目の前が暗くなる、というものです。いわゆる立ちくらみです。

MSDマニュアル家庭版によると、立ちくらみは、ベッドで寝ていた後や長く座っていた後に起こりやすく、運動や飲酒、重い食事の後、体の水分が足りないとき(脱水)にも多くみられます。長く続いている立ちくらみの原因としては、加齢による血圧の調節の変化や、薬、自律神経の働きの問題などが挙げられています。

夜中にトイレへ行こうとして、起き上がって最初の数歩で膝が崩れる、という話も、この形が関わっていることがあります。夜間のトイレについては、こちらで書いています。

2. 食事のあとにふらつく

食事のあと、しばらくしてからふらつく、ぼーっとする、というものです。

MSDマニュアル家庭版では、食事のあとに血圧が下がる食後低血圧は、高齢者では3人に1人という高い頻度で起こるとされています。めまいやふらつき、気が遠くなる、転倒などが起こることがあり、高齢者で食後にこうした症状がある場合は、食前と食後に血圧を測って確かめる必要があるとされています。

家で血圧を測れる場合は、食前と食後の数字をメモしておくと、受診のときに役立ちます。

3. 歩いていて、向きを変えるときにふらつく

立ち上がりや食事とは関係なく、歩いているとき、特に向きを変えるときや、狭い場所を通るときにふらつく、というものです。

MSDマニュアル家庭版では、転倒に関わる体の状態として、バランスや歩行の障害、視力の障害、特に足の感覚の低下、筋力の低下などが挙げられています。現場でも、向きを変えるときに足が揃ったままになっている、歩幅が小さくなっている、という方は、ふらつきやすい印象があります。

歩幅が小さくなっている場合の見方は、小刻み歩行の原因|高齢の親の歩幅が狭くなったら見たい3つのことで書いています。

前かがみで歩いている場合は、体の重さの中心が前に出て、止まったり向きを変えたりするときにふらつきやすくなります。前かがみの見分け方は、こちらで書いています。

薬が変わったあとからふらつく

3つの場面とは別に、必ず確かめたいのが薬の変化です。MSDマニュアル家庭版では、転倒のリスクを高める薬の例として、注意力に影響する薬(一部の鎮痛薬、抗不安薬、一部の抗うつ薬など)や、血圧を下げる薬(降圧薬、利尿薬、一部の心臓の薬など)が挙げられています。

「新しい薬が出てから」「薬の量が増えてから」ふらつくようになった場合は、そのことを医師や薬剤師に伝えてください。自己判断で薬をやめたり減らしたりはしないでください。

すぐに受診したほうがいいサイン

MSDマニュアル家庭版では、めまいがある場合に注意が必要な徴候として、次のようなものが挙げられています。

  • 最近始まった、または強い頭痛
  • 首の痛み
  • 歩くのが難しい
  • 意識を失った(失神)
  • 聞こえにくい、見えにくい、話しにくい、飲み込みにくい、腕や脚を動かしにくい

こうした徴候がある場合や、症状が重い、1時間以上続く、吐いている、という場合は、すぐに医療機関を受診する必要があるとされています。それ以外の場合も、できるだけ早くかかりつけ医の診察を受けてください。

特に、片側の手足に力が入らない、ろれつが回らない、といった様子が急に出た場合は、様子を見ずに救急車を呼ぶことも考えてください。

家族が今日からできること

受診が必要なサインがない場合でも、暮らしの中で見直せることがあります。

ふらつきのメモをとる

受診のときに役立つのが、いつ・どこで・何をしたときにふらついたかのメモです。次のようなことを書いておくと、医師に伝えやすくなります。

  • 日付と時間(朝起きてすぐ、食後など)
  • 何をしていたか(立ち上がった、歩いていた、向きを変えた)
  • どのくらい続いたか、転んだかどうか
  • 最近、薬が変わったかどうか
  • 血圧を測れた場合は、その数字

立ち上がるときは、いったん座ってから

MSDマニュアル家庭版では、立ち上がったときにめまいやふらつきを感じたら、いったん座ってからゆっくり立ち上がると、多くの場合は速やかに回復するとされています。

朝起きたときは、寝た状態から座った状態になって、少し間をおいてから立つ。家族が声をかけるなら、「急がなくていいよ」のひと言がそのまま対策になります。起き上がりの段階の見方は、こちらで書いています。

ふらついたときにつかまれる場所を作る

ベッドから立ち上がる場所、トイレ、廊下の曲がり角など、ふらつきやすい場面の近くにつかまれるものがあるかを見てください。家具を伝って歩いている場合は、その家具が動かないかも確かめておきます。外を歩くときに不安がある場合は、杖が合っているかも見直してください。

ふらつき以外も含めた、転ぶ原因の全体像はこちらで書いています。

ふらつきが続く場合の、歩行器の選び方はこちらで書いています。

よくある質問

高齢者のふらつきについて、よく調べられている質問をまとめました。

高齢者のふらつきは、何科を受診すればいいですか。

まずは、ふだん診てもらっているかかりつけ医に相談してください。薬の状況も含めて見てもらえます。必要に応じて、耳鼻咽喉科や脳神経内科などを紹介してもらえます。急な症状や、手足の動かしにくさ、話しにくさがある場合は、すぐに医療機関を受診してください。

ふらつきは年のせいですか。

年齢とともに、バランスや感覚、筋力は少しずつ変わります。ただ、高齢者のふらつきは、薬や血圧、脱水など、いくつかの原因が重なっていることが多いとされています。「年のせい」と決めつけず、ふらつく場面を確かめて相談してください。

薬を飲み始めてからふらつきます。やめてもいいですか。

自己判断で薬をやめたり減らしたりするのは避けてください。いつから、どんなときにふらつくかをメモして、医師や薬剤師に相談してください。

ふらつきは運動で良くなりますか。

筋力やバランスの低下が関わっている場合は、体を動かすことが役立つことがあります。ただ、原因が血圧や薬のこともあるので、まず原因を確かめてから始めてください。日々の歩く量の見方は高齢者の歩数の目安|数字より先に家族が見たい3つのことで書いています。

ふらつく親に、一人で外出させても大丈夫ですか。

ふらつく場面や頻度によって変わります。立ち上がった直後だけなど、場面が限られていれば、その場面に気をつけることで外出を続けられることもあります。急に増えた場合や、転んだことがある場合は、先にかかりつけ医や地域包括支援センターに相談してください。

まとめ

最後に、この記事のポイントです。

  • 高齢者のふらつきは、原因が1つではないことが多い
  • 立ち上がった直後・食事のあと・歩いて向きを変えるときで分けて見る
  • 薬が変わったあとからなら、自己判断でやめずに医師や薬剤師に伝える
  • 頭痛、手足の動かしにくさ、話しにくさなどがあれば、すぐに受診
  • いつ・どこで・何をしたときにふらついたかをメモする

まずは、親がふらつくのは「いつ」なのかを、1週間ほど気にかけてみてください。場面が分かるだけで、相談の一歩目がずっと具体的になります。

ふらつきや歩き方に気になる変化がある場合は、かかりつけの医療機関や地域包括支援センターにご相談ください。


参考にした資料

この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。

理学療法士 山下康希

この記事を書いた人

山下 康希|理学療法士
回復期リハビリテーション病院を経て、いまは訪問リハビリでご自宅に伺っています(ひと月およそ120件)。現場で見てきたことと公的な資料をもとに、転倒予防・痛み・住まいの工夫・介護保険など、ご家族が今日から試せることを書いています。

→ プロフィールを見る

Instagram・Threads・X・Facebookでも、親の転倒予防のヒントを発信しています。