高齢者の冬の入浴事故|ヒートショックを防ぐ5つのポイントと、家族の見守り

寒くなると、高齢の親のお風呂が心配になる家族は多いと思います。実は、高齢者の入浴中の事故は、冬に多く起きています。

お風呂は、温度の変化、浴槽のまたぎ、立ち上がりと、体への負担が重なる場所です。訪問リハビリで、入浴の動作の確認や手すりの位置の相談に関わることの多い理学療法士の立場から、家族が知っておきたいことをまとめます。

この記事で分かること

  • 高齢者の入浴中の事故が、どのくらい起きているか
  • 冬に事故が増える理由(ヒートショック)
  • 消費者庁がすすめる、入浴時の5つのポイント
  • 家族ができる見守りと、浴室の工夫

よくある場面

訪問先では、「熱いお湯に長くつかるのが好き」という方がいます。長年の習慣なので、家族が言ってもなかなか変えられません。

もうひとつは、寒い脱衣所で服を脱ぎ、冷えた浴室に入るという流れです。古い一戸建てでは、居間と脱衣所の温度差が大きいお宅を時々見かけます。

入浴中の事故は、交通事故より多い

消費者庁のコラムでは、令和5年に65歳以上の高齢者が「不慮の溺死及び溺水」で亡くなった人は8,270人で、そのうち浴槽での事故は6,541人とされています。同じ年の高齢者の交通事故死者は2,116人で、入浴中の事故はこれを大きく上回っています。

また、消費者庁の注意喚起では、こうした事故は11月〜4月の冬の時期を中心に多く起きるとされています。

冬に事故が増える理由

消費者庁の注意喚起では、温度差や冷え込みが事故につながりやすいとされています。暖かい部屋から寒い脱衣所、そして熱いお湯へと移動すると、体が急な温度変化にさらされます。これが、いわゆるヒートショックです。

さらに、長くお湯につかって体が温まりすぎたり、浴槽から急に立ち上がったりすると、ふらつきや意識がぼんやりすることがあります。浴槽の中で意識を失うと、溺れる危険があります。

入浴時の5つのポイント

消費者庁の注意喚起をもとに、入浴時のポイントを図にまとめます。

冬の入浴事故を防ぐ5つのポイント:1 脱衣所と浴室を暖める、2 お湯は41度以下、3 つかるのは10分まで、4 急に立ち上がらない、5 食後すぐ・飲酒後・薬のあとは避ける

1. 脱衣所と浴室を暖める

入る前に、脱衣所に小さな暖房を置く、浴室はシャワーでお湯をはる、ふたを開けて湯気で温めるなどして、寒暖差を小さくします。

2. お湯は41度以下、つかるのは10分まで

消費者庁では、湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にとされています。「熱いお湯が好き」な方には、まず1度だけ下げる、タイマーを置くなど、小さな工夫から始めてみてください。

3. 浴槽から急に立ち上がらない

ここは理学療法士として、いちばん伝えたいところです。浴槽から立ち上がるときは、手すりや浴槽のふちをしっかり持ち、ひと呼吸おいて、ゆっくり立ち上がります。立ち上がったら、すぐに歩き出さず、少し待ってから浴槽を出ます。

浴槽の中では、足を手前に引きにくく、立ち上がりそのものが難しい場所でもあります。立ち上がりのコツは、こちらで詳しく書いています。

4. 食後すぐ・飲酒後・薬のあとは避ける

消費者庁では、食後すぐの入浴、飲酒後、医薬品を飲んだあとの入浴は避けるようにとされています。

5. 入る前に、家族にひと声

消費者庁では、入浴する前に同居している人にひと声かけて、意識してもらうことがすすめられています。

家族ができる見守り

  • 入浴の前に「今から入るね」とひと声かけてもらう
  • 入浴中に一度、声をかける(返事がなければ様子を見に行く)
  • 寒い日は、夕食前の明るい時間に入ってもらう
  • ひとり暮らしの場合は、デイサービスでの入浴も選択肢に

呼びかけに反応しない、ぐったりしているなど、様子がおかしいときは、すぐに119番に連絡してください。

浴室の工夫

またぐ、立ち上がる、洗い場で座るなど、お風呂では転倒の危険もあります。道具や住宅改修で、動きやすくすることができます。

  • 浴槽のふちや洗い場の壁に手すりをつける
  • すべりにくいマットを敷く
  • 入浴用のいす(シャワーチェア)で、座って体を洗う
  • 浴槽の中に台(浴槽台)を置いて、立ち上がりやすくする

手すりの工事は介護保険の住宅改修、入浴用のいすなどは介護保険での購入の対象になることがあります。

夜のトイレなど、寒い時期に気をつけたい家の中の動きについては、こちらも参考にしてください。

よくある質問

高齢者の冬の入浴について、よく調べられている質問をまとめました。

熱いお湯が好きで、なかなか温度を下げてくれません。

長年の習慣なので、急に変えるのは難しいものです。まずは1度だけ下げる、つかる時間をタイマーで決めるなど、小さなことから始めてみてください。

シャワーだけにしたほうが安全ですか。

湯船につかるより体への負担は小さくなりますが、寒い浴室でのシャワーは体が冷えます。浴室を暖めてから入ることが大切です。

何時ごろに入るのがいいですか。

寒い時期は、夜遅くより、夕食前の比較的暖かい時間帯のほうが寒暖差が小さくなります。家族が家にいる時間に入ってもらうと、見守りもしやすくなります。

ひとり暮らしの親が心配です。

入浴の前後に電話やメッセージで連絡してもらう、デイサービスでお風呂に入ってもらうなどの方法があります。ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談してください。

浴槽から立ち上がれなくなったらどうすればいいですか。

あわてて引っぱり上げようとすると、本人も家族もけがをすることがあります。まずは浴槽の栓を抜いてお湯を減らし、肩にバスタオルをかけて冷えないようにします。ひとりで難しいときは、無理をせず助けを呼んでください。ぐったりしている場合はすぐに119番へ。

まとめ

最後に、この記事のポイントです。

  • 高齢者の浴槽での事故は、交通事故より多く、11月〜4月に多い
  • 寒暖差を小さくするため、脱衣所と浴室を暖める
  • お湯は41度以下、10分まで。急に立ち上がらない
  • 食後すぐ・飲酒後・薬のあとは避け、入る前に家族にひと声
  • 手すり・入浴用のいす・すべり止めで、浴室を動きやすく

お風呂は、体も気持ちも温まる大切な時間です。寒くなる前に、脱衣所の暖房や手すりなど、できるところから準備しておきましょう。

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参考にした資料

この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。体調や持病によって注意点は異なるため、気になることがある場合は医師に相談してください。

  • 消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」(リンク)
  • 消費者庁「コラムVol.12 高齢者の事故 ―冬の入浴中の溺水や食物での窒息に注意―」(リンク)
理学療法士 山下康希

この記事を書いた人

山下 康希|理学療法士
回復期リハビリテーション病院を経て、いまは訪問リハビリでご自宅に伺っています(ひと月およそ120件)。現場で見てきたことと公的な資料をもとに、転倒予防・痛み・住まいの工夫・介護保険など、ご家族が今日から試せることを書いています。

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