「少し歩くと足がしびれて、休まないと歩けない」「スーパーではカートを押すと楽に歩ける」。高齢の親からこんな話を聞いたら、腰部脊柱管狭窄症かもしれません。
腰の病気なのに、腰よりも足のしびれや痛みがつらいことが多いため、原因に気づきにくいのが特徴です。訪問リハビリで、脊柱管狭窄症のある方の歩き方や生活の工夫に関わることの多い理学療法士の立場から、家族が知っておきたいことをまとめます。
この記事で分かること
- 腰部脊柱管狭窄症の特徴的な症状
- 楽になる姿勢と、つらくなる姿勢
- 早めに受診したいサイン
- 歩く量を保つための、生活の工夫
よくある場面
訪問先でも、「足がしびれるから」と散歩をやめてしまい、数か月で足の力が落ちてしまうケースがあります。休みながらなら歩けるのに、歩くこと自体をやめてしまうのは、もったいないことです。
また、「シルバーカーを押すと楽」「自転車なら平気」という話を、本人は病気と関係ないと思っていることもよくあります。これは、この病気のとても大切なサインです。
腰部脊柱管狭窄症とは
背骨の中には、神経が通る脊柱管というトンネルがあります。上尾中央総合病院の解説では、加齢などで骨や靱帯、椎間板が変形して脊柱管が狭くなり、神経が圧迫される状態とされています。
いちばんの特徴は「間欠性跛行」
聖路加国際病院の解説では、しばらく歩き続けると足の痛みやしびれ、つっぱり感が出て歩けなくなり、少し腰を曲げて座って休むと楽になり、また歩けるようになるとされています。これを間欠性跛行(かんけつせいはこう)といいます。
親にこんな様子はありませんか
- 5〜10分ほど歩くと、立ち止まったり座り込んだりする
- 休むとまた歩ける
- スーパーのカートやシルバーカーを押すと、楽に歩ける
- 自転車は長く乗れる
- お尻から足にかけて、しびれや痛みがある
楽な姿勢・つらい姿勢
上尾中央総合病院の解説では、前かがみの姿勢で脊柱管は広くなり、腰をそらすと狭くなるとされています。この仕組みを知っておくと、生活の工夫がしやすくなります。

聖路加国際病院の解説でも、自転車など腰を曲げている状態では症状が出にくいとされています。
こんなときは、早めに受診を
- 尿が出にくい、もれる、便の出方がおかしい
- 足の力が弱くなった(つまずく、スリッパが脱げやすい)
- 歩ける距離が急に短くなった
- 痛みやしびれが強く、夜も眠れない
聖路加国際病院の解説では、足の筋力低下や、膀胱・直腸の障害(尿や便の異常)がある場合は手術が必要とされています。このようなサインがあれば、早めに整形外科を受診してください。
なお、歩くと足が痛くなる症状は、足の血管の病気でも起きることがあります。自己判断せず、まずは受診して原因を確かめてもらうことが大切です。
治療はどんなもの?
まずは、手術をしない治療(保存療法)が行われることが多いです。
- 薬:痛み止め、神経の痛みに使う薬、神経のまわりの血流をよくする薬など
- ブロック注射:神経のまわりに注射して、痛みをやわらげる
- リハビリ:体幹の筋力訓練や、胸・腰・骨盤から足にかけてのストレッチ
聖路加国際病院の解説では、数か月の保存療法で効果がない場合や、痛み・しびれが強い場合などに、手術が検討されるとされています。
歩く量を保つための、生活の工夫

ここからは、訪問リハビリの現場で家族に伝えていることです。大切なのは、しびれが出る前に休みながら、歩くこと自体は続けることです。
1. シルバーカーや杖を「支え」に
シルバーカーを押したり杖をついたりすると、自然と少し前かがみになり、楽に歩けることがあります。上尾中央総合病院の解説でも、杖などを支えに前かがみで歩くと、足の症状が楽になるとされています。
要介護認定を受けている場合は、介護保険で歩行器をレンタルできることもあります。
2. 休める場所を決めて歩く
散歩のコースに、ベンチやいすのある場所を入れておきます。「しびれてから休む」より、「しびれる少し前に休む」ほうが、結果的に長い距離を歩けます。
3. 自転車や、いすに座ってできる運動も
歩くのがつらい日は、自転車(室内のエアロバイクなど)や、いすに座ってできる運動で、足の筋力を保つ方法もあります。安全に乗れるかどうかは、体の状態によって違うので、医師や理学療法士に相談してください。
4. 腰をそらす動作を減らす
高い所の物を取る、洗濯物を高い位置に干すなど、腰をそらす動作はつらくなりやすいです。よく使う物は、胸から腰の高さに置くようにします。台所など長く立つ場所では、低い台に片足をのせると楽になることもあります。
5. 歩いた量を記録する
「今日は何分歩けたか」「どこで休んだか」を記録しておくと、受診のときに医師に伝えやすくなり、症状の変化にも気づけます。歩数の目安については、こちらで書いています。
ひざの痛みもある場合は、こちらも参考にしてください。自分で続けるのが難しい場合は、訪問リハビリなどで専門職に見てもらう方法もあります。
よくある質問
腰部脊柱管狭窄症について、よく調べられている質問をまとめました。
しびれるなら、歩かないほうがいいですか。
歩かないでいると、足の筋力が落ちてしまいます。しびれが出る前に休みながら、歩くこと自体は続けるのがおすすめです。どのくらい歩いてよいかは、医師や理学療法士に相談してください。
自転車は乗っても大丈夫ですか。
腰を少し曲げた姿勢になる自転車は、症状が出にくいとされています。ただし、ふらつきや足の力の弱さがある場合は転倒の危険があるので、安全に乗れるか確認してください。
コルセットはつけたほうがいいですか。
症状や体の状態によって合うかどうかが違います。医師に相談して決めてください。
何科を受診すればいいですか。
整形外科を受診してください。歩くと足が痛くなる症状は、足の血管の病気でも起きることがあるので、原因を確かめてもらうことが大切です。
手術はしないといけませんか。
多くの場合、まずは薬やリハビリなどの手術をしない治療から始めます。足の力が弱くなる、尿や便の異常があるなどの場合は、手術が検討されます。
まとめ
最後に、この記事のポイントです。
- 腰部脊柱管狭窄症は、背骨の中の神経の通り道が狭くなる病気
- 歩くと足がしびれ、休むとまた歩ける(間欠性跛行)のが特徴
- 前かがみは楽、腰をそらすとつらい。シルバーカーや自転車が楽なのもそのため
- 尿や便の異常、足の力の低下があれば早めに整形外科へ
- しびれる前に休みながら、歩くことは続ける
「歩くと足がしびれるから」と外出をやめてしまう前に、休み方と道具を工夫してみてください。歩ける距離を保つことが、親の暮らしを守ることにつながります。
参考にした資料
この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。症状や治療は人によって異なるため、気になる症状がある場合は医師に相談してください。




