高齢の親の靴の選び方|理学療法士が見る、転びにくい靴の5つのポイント

「親がよくつまずくようになった」「家の中でスリッパが脱げそうで、見ていてひやっとする」。転ぶ原因は体の衰えだけではありません。毎日はいている靴や室内履きも、転びやすさに大きく関わっています。

この記事では、訪問リハビリで高齢の方の足もとを見てきた理学療法士の立場から、転びにくい靴の選び方と、家の中の履き物の見直し方をまとめます。

この記事で分かること

  • 高齢の方の転倒と、履き物の関係
  • 転びにくい靴の5つのチェックポイント
  • 家の中の履き物(スリッパ・靴下)の見直し方
  • 靴を買うとき、はくときの注意点

よくある場面

訪問先では、かかとを踏んだまま靴をはいている、サイズの大きい靴をひもをゆるめたままはいている、かかとのないスリッパで家の中を歩いている、という方を見かけます。

本人は「はきやすいから」「脱ぎはきが楽だから」と選んでいることが多いのですが、足と靴の間にすき間があると、歩くたびに足が靴の中でずれて、すり足やつまずきの原因になります。

転倒は、家の中でも多く起きている

消費者庁は、高齢者の転倒事故について、約半数が住み慣れた自宅で起きていると注意を呼びかけています。自宅の中でも、浴室・脱衣所、ベッドや布団のまわり、玄関、階段などで転倒が起きています。

製品評価技術基盤機構(NITE)がまとめた高齢者の屋内事故の事例には、立ち上がってスリッパをはこうとしたときに、床に敷いたラグの上で滑って転倒したものもあります。外の靴だけでなく、家の中の履き物と床の組み合わせも見直したいところです。

転ぶ原因の全体像や、夜のトイレで転びやすい理由については、こちらで書いています。

転びにくい靴の5つのチェックポイント

厚生労働省の転倒予防の資料では、靴選びのポイントとして、甲の締まり、つま先の余裕、靴の中で足がずれないこと、指の付け根で曲がること、つま先が床から少し上がっていること、靴底がすり減っていないことなどが挙げられています。これを家族が見やすい5つにまとめました。

転びにくい靴の5つのチェック:1 かかとがしっかりしている、2 甲で締められる、3 つま先に少し余裕がある、4 つま先が少し反り上がっている、5 靴底が滑りにくく、よく曲がる

1. かかとがしっかりしている

かかとの部分が硬めで、足をしっかり包むものを選びます。かかとがやわらかすぎる靴や、かかとを踏んでいる靴は、足が靴の中で動いてしまい、歩き方が不安定になります。

2. 甲で締められる

マジックテープやひもで、甲のところを締められるものがおすすめです。はいたあとに締めることで、足と靴が一体になります。マジックテープなら、指先の力が弱い方でも自分で調整しやすくなります。

3. つま先に少し余裕がある

つま先に、指が軽く動かせるくらいの余裕があるものを選びます。きつすぎる靴は指が使えず、ゆるすぎる靴は足がずれます。足がむくみやすい方は、夕方に試しばきをすると合わせやすくなります。

4. つま先が少し反り上がっている

横から見て、つま先が床から少し上がっている靴は、足を前に出すときに、つま先が床や小さな段差にひっかかりにくくなります。すり足ぎみの方には、特に見てほしいところです。

5. 靴底が滑りにくく、よく曲がる

靴底は、滑りにくく、指の付け根のところで曲がるものを選びます。靴底が硬すぎると、足の動きについてこず、歩きにくくなります。反対に、靴全体がぐにゃぐにゃに曲がるものは、足を支えられません。今はいている靴も、靴底のすり減りを一度見てください。

家の中の履き物も見直す

家の中では、スリッパや靴下で過ごしている方が多いと思います。次のような点を見直してみてください。

  • かかとのないスリッパは、脱げやすく、足をひきずる歩き方になりやすい。かかとのある室内履きに変える
  • つるつるした靴下だけで、フローリングを歩かない。滑り止め付きの靴下や室内履きを
  • ラグやマットは、端がめくれない、床の上で滑らないように留める
  • 玄関では、いすに座って靴を脱ぎはきする

室内履きを選ぶときも、上の5つのチェックポイントが目安になります。

靴を買うとき、はくときの注意点

買うとき

  • 必ず試しばきをして、数歩歩いてみる
  • 左右で足の大きさが違うことがあるので、両足ではいて確かめる
  • 「大きめなら安心」ではなく、足に合ったサイズを
  • 足に痛みや変形がある場合は、医師や専門職に相談する

はくとき

  • かかとを靴に合わせてから、甲のマジックテープやひもを締める
  • かかとを踏まない。脱ぎはきしやすい靴を選ぶことで防げます

足もとを見直しても、ふらつきが強い場合は、杖やシルバーカーなどの道具が合うこともあります。選び方はこちらで書いています。

足もとを見直しても不安が残る場合の、歩行器の選び方はこちらで書いています。

よくある質問

高齢の方の靴選びについて、よく調べられている質問をまとめました。

介護用の靴を買ったほうがいいですか。

介護用やリハビリ用として売られている靴は、かかとがしっかりしていて甲をマジックテープで締められるものが多く、選びやすいです。ただ、名前よりも、5つのチェックポイントに合っているか、本人の足に合っているかを見て選んでください。

スリッパはやめたほうがいいですか。

かかとのないスリッパは、脱げやすく、つまずきやすくなります。家の中でも、かかとのある室内履きに変えるのがおすすめです。

はだしのほうが安全ではありませんか。

はだしは足の裏で床を感じやすい一方、ケガをしやすく、床が冷たい季節は体も冷えます。家の環境や本人の足の状態によって合う方法は違うので、迷う場合は専門職に相談してください。

靴はどのくらいで買い替えたらいいですか。

期間より、状態で判断してください。靴底の凹凸がすり減っている、かかとがつぶれている、マジックテープがつきにくくなった、というときが買い替えの目安です。

本人が新しい靴をはきたがりません。

慣れた靴を変えるのは、誰でも抵抗があります。まずは家の中の履き物から変える、一緒に店に行って試しばきをする、など本人が選べる形にすると、受け入れてもらいやすくなります。

まとめ

最後に、この記事のポイントです。

  • 高齢者の転倒は、約半数が自宅で起きている
  • 転びにくい靴は、かかと・甲・つま先の余裕・つま先の反り・靴底の5つで見る
  • 家の中では、かかとのある室内履きに。つるつるの靴下だけで歩かない
  • 買うときは両足で試しばき。「大きめ」は選ばない

靴は、毎日の一歩一歩を支える道具です。まずは今日、親がはいている靴と室内履きのかかとと靴底を、一緒に見てみてください。

あわせて読みたい記事です。


参考にした資料

この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。足に痛みや変形がある場合は、医師や専門職に相談してください。

  • 消費者庁「10月10日は「転倒予防の日」、高齢者の転倒事故に注意しましょう!」(リンク)
  • 製品評価技術基盤機構(NITE)「屋内で起こる高齢者の転倒・転落事故を防ぐ」(リンク)
  • 厚生労働省 STOP!転倒災害プロジェクト「転倒予防のために適切な「靴」を選びましょう」(リンク)
理学療法士 山下康希

この記事を書いた人

山下 康希|理学療法士
回復期リハビリテーション病院を経て、いまは訪問リハビリでご自宅に伺っています(ひと月およそ120件)。現場で見てきたことと公的な資料をもとに、転倒予防・痛み・住まいの工夫・介護保険など、ご家族が今日から試せることを書いています。

→ プロフィールを見る

Instagram・Threads・X・Facebookでも、親の転倒予防のヒントを発信しています。