「玄関の段差を、車いすで越えられるようにしたい」「スロープを借りたいけれど、どれを選べばいいか分からない」。高齢の親の家の段差のことで、こんな悩みはありませんか。
スロープは、段差の高さと、使う人の動き方に合わせて選ぶ福祉用具です。合わないものを置くと、急すぎて押せない、重くて出し入れできない、かえってつまずく、ということも起こります。訪問リハビリで家の段差を見てきた理学療法士の立場から、選び方のポイントをまとめます。
この記事で分かること
- スロープの種類
- 選ぶときの4つのポイント
- 段差の高さと、スロープの長さの目安
- 介護保険でのレンタル・購入
スロープの種類
長寿科学振興財団の解説では、スロープの材質にはアルミ、グラスファイバー、木、プラスチックなどがあり、折りたたみ式や、車いすの車輪に合わせた2枚組のレール状のものがあると紹介されています。家でよく見かける形は、次のようなものです。
- 据え置き型:段差の前に置いたままにしておくもの。玄関の上がりかまちや、掃き出し窓の段差など
- 折りたたみ型:使うときだけ広げるもの。持ち運んで外出先で使うこともできる
- レール型:車いすの左右の車輪の位置に合わせて、2本並べて使うもの
- 段差解消ブロック型:敷居などの数センチの小さな段差を、なだらかにするもの
介護保険の福祉用具として借りられるのは、取り付けに工事がいらないスロープです。工事をして段差をなくす場合は、福祉用具ではなく住宅改修の対象になります。
選ぶときの4つのポイント
スロープを選ぶときに、理学療法士が現場で確認していることを4つにまとめました。

1. 段差の高さを測る
まず、段差の高さをメジャーで測ります。床から段の上までの高さを、何か所か測っておくと安心です。段差が2段以上ある場合や、高さが大きい場合は、スロープ1枚で越えようとせず、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員に相談しましょう。
2. 長さは「ゆるやかさ」で決める
同じ段差でも、スロープが短いほど急になります。長寿科学振興財団の解説では、勾配の目安として次のように紹介されています。
- 5度:車いすを自分でこげて、介助する人も楽に押せる
- 8度:電動車いすで上れて、女性の介助者でも押せる
- 15度以上:危険
この角度から計算すると、スロープの長さはおおよそ次のくらいになります。
- 段差10cm:5度なら約115cm、8度なら約70cm
- 段差15cm:5度なら約170cm、8度なら約105cm
- 段差20cm:5度なら約230cm、8度なら約140cm
家族が介助して押すなら、できるだけ5度に近いゆるやかさを目安にしてください。介助する人が高齢の場合は、特にゆるやかなものが安心です。
3. 前後に平らな場所があるか
長いスロープほど、置く場所が必要です。スロープの上と下に、車いすが止まれる平らな場所があるかを確かめましょう。玄関の外が狭い、すぐ道路になっている、という場合は、スロープより段差解消機など別の方法が合うこともあります。
4. 誰が、どう使うか
スロープは、車いすの人には便利でも、歩く人には歩きにくいことがあります。坂道は、足首やひざに負担がかかり、特に下りでバランスを崩しやすいからです。杖や歩行器で歩いて出入りする方は、スロープより手すりと段差の組み合わせのほうが安全な場合もあります。
また、折りたたみ型は、毎回出し入れする人が持てる重さかも大切です。長寿科学振興財団の解説でも、重くて取り外しができないなど、かえって負担が増えることがあると注意されています。
車いすでスロープを使うときのコツ
- 上り:前向きで、まっすぐ押す。途中で止まらない
- 下り:介助する人が先に下りる後ろ向きで、ゆっくり下ろす
- ブレーキ:スロープの上で止まるときは、必ずブレーキをかける
- 雨の日:すべりやすいので、乾いた布でふいてから使う
- ずれ:使う前に、スロープが段にしっかりかかっているか確かめる
介護保険でのレンタル・購入

工事のいらないスロープは、介護保険の福祉用具レンタルの対象です。車いすや介護ベッドと違って、要支援1・2、要介護1の方も借りることができます。
厚生労働省の資料によると、令和6年4月からは、固定用スロープ、歩行器(歩行車を除く)、歩行補助つえ(松葉づえを除く)は、レンタルか購入かを選べるようになりました。長く同じ場所で使うことが決まっているなら購入、体の状態が変わりそうならレンタル、という考え方です。どちらがよいかは、ケアマネジャーや福祉用具専門相談員と相談して決めましょう。
- 自己負担:所得に応じて1〜3割
- レンタルのよさ:体の状態が変わったら、別のものに替えやすい
- 購入のよさ:長く使う場合、費用が抑えられることがある
- 相談先:ケアマネジャー、地域包括支援センター
よくある質問
スロープについて、よく調べられている質問をまとめました。
段差が低ければ、スロープは短くてもいいですか。
段差が低くても、短すぎると急になり、車輪がひっかかったり、つまずいたりします。数センチの段差なら、段差解消ブロックなど専用のものを選びましょう。
玄関の外の階段にも使えますか。
段数が多い階段にスロープを置くと、長さが足りず急になりがちです。段差解消機や、住宅改修でのスロープ工事など、別の方法も含めて相談してください。
歩いている親にもスロープは必要ですか。
歩いて出入りする方には、スロープより手すりのほうが合う場合があります。坂道は下りでバランスを崩しやすいので、歩き方を見て決めましょう。
購入したあとに合わなくなったら?
購入したものは基本的に交換できません。体の状態が変わりそうな時期は、まずレンタルで試すのも一つの方法です。
自分で買ったスロープでも大丈夫ですか。
使えますが、介護保険の対象にはなりません。また、長さや重さが合っているかを、福祉用具専門相談員などに見てもらうと安心です。
まとめ
最後に、この記事のポイントです。
- スロープは段差の高さと、使う人の動き方に合わせて選ぶ
- 長さの目安は5度のゆるやかさ。段差10cmなら約115cm
- スロープの上と下に平らな場所があるかを確かめる
- 歩いて出入りする方は、手すりのほうが安全なこともある
- 工事のいらないスロープは、要支援の方も介護保険で借りられる。固定用は購入も選べる
まずは、親の家の段差の高さを測ってみてください。それだけで、ケアマネジャーへの相談がぐっと具体的になります。
参考にした資料
この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年10月確認)。制度の内容は変わることがあります。くわしくは、お住まいの市区町村やケアマネジャーに確認してください。




