「一人暮らしの母が、家の中で転んで動けなくなったらどうしよう」「電話に出ないと、何かあったのではと心配になる」。離れて暮らす高齢の親のことで、こんな不安はありませんか。
毎日そばにいられなくても、転ばないための準備と、もしものときに気づける仕組みをつくっておくことはできます。訪問リハビリで一人暮らしの高齢の方の家を見てきた理学療法士の立場から、家族ができる見守りの方法をまとめます。
訪問先には、一人で暮らしている方もいます。なかには、認知症がありながら一人暮らしを続けている方もいます。
この記事で分かること
- 高齢者の事故で多いのは家の中での転倒
- 離れて暮らす親の見守り、4つの方法
- 帰省したときに見ておきたいこと
- 見守りを始めるときの注意点
高齢者の事故で多いのは、家の中での転倒
東京消防庁によると、救急搬送された高齢者の事故で最も多いのは「ころぶ」事故で、令和6年には73,500人が救急搬送されています。発生場所で最も多いのは住宅などの住まいで、家の中では居室・寝室、次いで玄関・勝手口、廊下・縁側・通路の順に多くなっています。
一人暮らしの方が家の中で転ぶと、起き上がれず、誰にも気づかれないまま時間がたつことがあります。だからこそ、離れて暮らす家族の見守りでは、転ばないことと、転んだときに早く気づけることの両方が大切です。
離れて暮らす親の見守り、4つの方法
家族ができる見守りを、4つにまとめました。どれか1つではなく、組み合わせて使うのがおすすめです。

1. 家の中の転びやすい場所を減らす
見守りの第一歩は、転ぶきっかけを減らすことです。床に置いたままの物、めくれたカーペット、夜に暗い廊下など、よく通る場所から見直しましょう。手すりや段差の工事には、介護保険の住宅改修が使えることもあります。
2. 連絡の習慣をつくる
「毎朝9時に電話する」「夜にメッセージを送り合う」など、決まった時間に連絡する習慣をつくると、いつもと違うことに気づきやすくなります。親にとって負担にならない方法を、一緒に決めるのがコツです。
3. 自治体の緊急通報システムを調べる
多くの区市町村には、一人暮らしの高齢の方などを対象にした緊急通報システムがあります。たとえば東京都北区では、ボタンを押すと民間の受信センターにつながり、看護師などが24時間対応して、必要なときは119番通報する仕組みです。人の動きが一定時間ないと自動で知らせる安否確認センサもあります。
対象になる人や費用は、自治体によって違います。北区の場合は、65歳以上の一人暮らしなどで近くに親族が住んでいない方が対象で、住民税が非課税の世帯などは無料です。親が住んでいる市区町村のホームページや、地域包括支援センターで確認してみてください。
4. 地域の人とつながっておく
離れて暮らす家族だけで見守るのには限りがあります。地域包括支援センターは、一人暮らしの高齢の方の相談にのってくれる身近な窓口です。家族が遠くに住んでいることを伝えておくと、何かあったときの連絡がスムーズになります。
また、近所の人や、よく行くお店、新聞や配食サービスなど、親の日常の中で顔を合わせる人がいることも、見守りの力になります。
帰省したときに見ておきたいこと

久しぶりに会ったときこそ、変化に気づくチャンスです。理学療法士として、次のようなところを見てほしいと思います。
- 立ち上がり:いすから立つときに、手をついたり、勢いをつけたりしていないか
- 歩き方:歩幅が小さくなっていないか、壁や家具を伝って歩いていないか
- 家の中:床に物が増えていないか、よく使う物が高い場所に置かれていないか
- 食事:冷蔵庫に同じ物ばかり入っていないか、食べ残しが増えていないか
- 薬:飲み忘れの薬がたまっていないか
気になることがあれば、かかりつけ医やケアマネジャー、地域包括支援センターに相談しましょう。要介護認定を受けると、訪問リハビリなどで、家での動き方を一緒に考えることもできます。
見守りを始めるときの注意点
- 本人の気持ちを大切に:「監視されている」と感じさせないよう、目的を話して一緒に決める
- カメラは慎重に:見守りカメラを使う場合は、置く場所や見る時間を本人と相談する
- 「何かあったら」を決めておく:連絡がつかないとき、誰が様子を見に行くかを決めておく
- 合いかぎの置き場所:近くの親族や信頼できる人に預けておくと、いざというときに入れる
よくある質問
離れて暮らす親の見守りについて、よく調べられている質問をまとめました。
親が「見守りなんていらない」と言います。
「心配だから」より、「何かあったときに、すぐ助けに行けるようにしたい」と伝えるほうが、受け入れてもらいやすいことがあります。まずは連絡の習慣など、負担の少ないものから始めてみましょう。
緊急通報システムは、要介護認定がないと使えませんか。
自治体によって条件は違います。認定がなくても使える場合もあるので、親が住んでいる市区町村に確認してください。
家の中で転んで起き上がれないときに、自分で通報できますか。
首から下げるペンダント型のボタンなど、身につけておける機器もあります。ただし、身につけていないと使えないので、お風呂やトイレ、夜間にどうするかも決めておきましょう。
どのくらいの頻度で帰省すればいいですか。
決まった目安はありません。帰省できない間は、電話やビデオ通話で、声の調子や部屋の様子を見るだけでも、変化に気づくきっかけになります。
まとめ
最後に、この記事のポイントです。
- 高齢者の事故で最も多いのは「ころぶ」事故。場所は住まいが最も多い
- 見守りは、転ばないことと早く気づけることの両方が大切
- 連絡の習慣と自治体の緊急通報システムを組み合わせる
- 地域包括支援センターに、家族が遠くに住んでいることを伝えておく
- 帰省したら、立ち上がり・歩き方・家の中を見ておく
まずは、親が住んでいる市区町村に、どんな見守りの仕組みがあるかを調べるところから始めてみてください。
参考にした資料
この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年10月確認)。緊急通報システムの内容や費用は、自治体によって違います。くわしくは、お住まいの市区町村に確認してください。



