「布団から起き上がるのがつらそう」「毎朝、家族が抱えるようにして起こしている」。そんなときに検討したいのが介護ベッドです。
介護ベッドは、本人が自分で起き上がる・立ち上がるのを助け、家族の介助の負担も軽くしてくれる道具です。一方で、高さや置き場所が合わないと、かえって使いにくくなることもあります。訪問リハビリで介護ベッドの導入に立ち会ってきた理学療法士の立場から、選び方をまとめます。
この記事で分かること
- 布団から介護ベッドに替えるメリット
- 介護ベッドの機能と、モーターの数の違い
- 高さ・置き場所・手すりの選び方
- 介護保険でのレンタルと、使える人の条件
よくある場面
訪問先で実際にあるのが、布団から起き上がれず、ご家族が毎朝抱え起こしているケースです。ご本人は腕で体を押し上げる場所がなく、ご家族は床に近い低い姿勢で介助するので、腰への負担も大きくなります。
ベッドを用意したあとにも、つまずきやすい点があります。高さが低すぎて立ち上がりにくかったり、壁ぎわに置いたために、介助する人が立つ場所がなかったりするケースです。
一方で、布団からベッドに替えたことで、起き上がりや立ち上がりを自分でできるようになった方もいます。
ただ、「布団のほうが落ち着く」とベッドを望まない方もいます。その場合、私はご本人の意向に合わせています。ベッドは、ご本人の体と気持ち、そして部屋の広さの3つに合わせて考えることが大切です。
布団から介護ベッドに替えるメリット
- 起き上がりが楽になる:背上げ機能や手すりを使って、自分で起きやすくなる
- 立ち上がりが楽になる:床からではなく、いすと同じ高さから立てる
- 家族の介助が楽になる:高さを上げれば、腰を曲げずに介助できる
- 寝ている時間が減らせる:起きるのが楽になると、日中に座って過ごす時間を作りやすい
寝ている時間が長くなると、体は思っている以上に早く弱ります。起き上がりの見方や、動かないことで起こる変化については、こちらで書いています。
介護ベッドでできること
介護ベッドは「特殊寝台」とも呼ばれます。健康長寿ネットでは、介護ベッドはモーターの数によって機能が違い、1モーターは背上げのみ、2モーターは背上げと脚上げ、3モーターはさらに高さの調整ができると説明されています。

1. 背上げ
ベッドの背の部分を起こして、上半身を起こします。起き上がりの途中まで手伝ってくれるので、自分で起きやすくなります。食事や着替えのときに、座った姿勢をとるのにも使えます。
2. 脚上げ(ひざ上げ)
ひざの下の部分を持ち上げます。健康長寿ネットでは、背上げをすると体がずれやすく、ひざ上げの機能があると床ずれの予防に役立つとされています。
3. 高さ調整
ベッドの高さを変えられます。立ち上がるときは低めに、家族が介助するときは高めに、と場面に合わせて変えられるのが大きな利点です。
4. ベッド用手すり
ベッドにつける手すりで、つかまって起き上がったり、立ち上がったりするのに使います。転落を防ぐための「サイドレール」とは役割が違うので、選ぶときは区別してください。
介護ベッドの選び方

ここからは、現場で実際に見ているポイントです。
高さ:座ったとき、足の裏が床につく
ベッドの端に座ったとき、足の裏が床にぴったりつき、ひざがおよそ直角になるくらいが目安です。低すぎると立ち上がりにくく、高すぎると足が床につかず座った姿勢が不安定になります。高さを調整できるベッドなら、本人に合わせてこまめに変えてください。
置き場所:介助する場所と、起き上がる向き
健康長寿ネットでは、食事の介助や体の向きを変える介助に必要なスペースを確保すること、ベッドの上げ下げで位置が約10cm動くことも考えておくことがすすめられています。また、本人が起き上がりやすい向き(体の動かしやすい側)から降りられるように置くと、自分で起きやすくなります。
手すり:起き上がる側につける
ベッド用手すりは、起き上がって足を下ろす側につけます。つかまったときに体を支えやすい位置かどうか、実際に起き上がって確かめてください。
マットレス:やわらかすぎないもの
健康長寿ネットでは、介護ベッドのマットレスは、体が沈み込んで寝返りや起き上がりがしにくくならないよう、硬めのものが多いとされています。やわらかすぎるマットレスは、寝心地がよくても起き上がりにくくなることがあります。床ずれが心配な場合は、専用のマットレスを検討してください。
背上げのときの注意
- 背上げの前に、お尻の位置をベッドの曲がる位置に合わせる
- ひざ上げ機能があれば、先にひざを少し上げてから背上げをすると、ずり下がりにくい
- 背上げのあとは、背中とマットレスの間に手を入れて、背中を一度浮かせると、ずれやつっぱりが抜けて楽になる
介護保険でレンタルできる?
介護ベッドは、介護保険の福祉用具としてレンタルできます。ただし健康長寿ネットによると、要支援1・2と要介護1の方は、原則として介護保険の対象になりません。要介護2以上の方が対象で、費用の1〜3割(所得による)を負担します。
レンタル料は、機種や事業所によって違います。実際の金額は、ケアマネジャーや福祉用具の事業所に確認してください。要支援・要介護1の方でも、体の状態によっては例外的に認められる場合があるので、まずはケアマネジャーに相談してみてください。
レンタルの流れや、ほかに借りられる用具、要介護認定の申請については、こちらで書いています。
ベッドからの立ち上がりを手伝うときの介助のしかたや、部屋の手すりの工事については、こちらで書いています。
ベッドを入れたあと、起き上がりや立ち上がりを家で練習したい場合は、訪問リハビリも使えます。
よくある質問
介護ベッドについて、よく調べられている質問をまとめました。
布団のままではだめですか。
布団でも、自分で起き上がって立てているなら急いで替える必要はありません。起き上がりに時間がかかる、家族が抱え起こしている、立ち上がるときに何かにつかまっている、といった様子があれば、ベッドを検討する時期です。
介護ベッドは買うのとレンタル、どちらがいいですか。
介護保険が使える方は、レンタルがおすすめです。体の状態が変わったときに、機種を替えたり返したりしやすく、点検や修理も事業所がしてくれます。
要介護1ですが、介護ベッドは使えませんか。
原則として介護保険の対象外ですが、体の状態によっては例外的に認められる場合があります。ケアマネジャーに相談してください。自費でのレンタルや購入という方法もあります。
モーターの数は、いくつ必要ですか。
体の状態や、介助が必要かどうかで変わります。立ち上がりや家族の介助を楽にしたい場合は、高さを変えられるものが便利です。福祉用具専門相談員や理学療法士に相談して選んでください。
ベッドから落ちないか心配です。
転落が心配な場合は、サイドレールを使う方法があります。ただし、手足がはさまる事故もあるため、すき間をふさぐカバーを使うなど、事業所に安全な使い方を確認してください。
まとめ
最後に、この記事のポイントです。
- 介護ベッドは、起き上がり・立ち上がり・家族の介助を楽にする
- 機能は背上げ・脚上げ・高さ調整。モーターの数で違う
- 高さは、座ったとき足の裏が床につき、ひざがおよそ直角が目安
- 介助する場所と起き上がる向きを考えて置く
- 介護保険のレンタルは原則要介護2以上。まずはケアマネジャーに相談
介護ベッドは、合うものを選べば、本人の「自分でできる」を増やしてくれる道具です。まずは、今の起き上がり方と立ち上がり方を、家族で一度見てみてください。
参考にした資料
この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。介護保険の細かな取り扱いは市区町村によって異なる場合があるため、ケアマネジャーや市区町村の窓口に確認してください。




