「腰が痛いのは昔から」「年だから仕方ない」。高齢の親が腰の痛みを口にしても、本人も家族も、そのままにしてしまうことが少なくありません。
高齢の方の腰痛の多くは、体を動かしながら付き合っていけるものです。一方で、すぐに受診したほうがいい腰痛もあります。訪問リハビリで腰痛のある方を多く見てきた理学療法士の立場から、原因の見分け方と、家でできることをまとめます。
この記事で分かること
- 高齢の方に多い腰痛の原因と特徴
- すぐに受診したい腰痛のサイン
- 痛いときも「寝てばかり」にならない工夫
- 家でできる、腰を守る動き方
よくある場面
訪問先でも、腰が痛いからと一日の多くを横になって過ごし、痛みは少し落ち着いたのに、今度は立ち上がりや歩くのがつらくなっているケースがあります。
もうひとつは、「いつもの腰痛」だと思っていたら、実は転んでもいないのに背骨が折れていたというケースです。高齢の方の腰痛は、「いつもと違う」に気づけるかどうかが大切です。
高齢の方に多い腰痛の原因
健康長寿ネットでは、高齢の方の腰痛は長く続く(慢性の)ものが多いとされ、主な原因として次の3つが挙げられています。
1. 変形性脊椎症
年齢とともに、背骨や、骨と骨の間のクッション(椎間板)が変化して起こります。朝に痛みが強く、起きて体を動かしているうちに軽くなるのが特徴とされています。
2. 腰部脊柱管狭窄症
背骨の中の神経の通り道が狭くなり、お尻や足のしびれ・痛みが出ます。歩くと足がしびれ、少し休むとまた歩けるのが特徴です。くわしくはこちらで書いています。
3. 背骨の圧迫骨折
骨が弱くなっていると、転倒や、ちょっとした力でも背骨がつぶれるように折れることがあります。尻もちをついたあとや、重い物を持ったあとに急に痛くなった場合は注意が必要です。骨粗しょう症とあわせて、こちらで書いています。
すぐに受診したい腰痛のサイン
日本整形外科学会は、次のような症状がある腰痛は、放置したり自分で様子を見たりせず、すぐに整形外科を受診するようにと呼びかけています。

腰痛診療ガイドラインでも、動いても休んでも変わらない痛み、発熱、体重が減ってきた、がんの治療を受けたことがあるなども、注意が必要なサインとして挙げられています。
健康長寿ネットでは、腰痛の中には、大動脈解離や背骨の感染、がんの骨への転移など、早く治療しないと命に関わるものもあるとされています。突然の激しい痛みで冷や汗が出る、顔色が悪いといったときは、迷わず救急を呼んでください。
痛いときも「寝てばかり」にならない
健康長寿ネットでは、腰痛があるからといって安静にしすぎると、足の筋力や心臓・肺の働きの低下につながるため、治療で痛みを抑えながら、ふだんの活動を保つことが大切とされています。腰痛診療ガイドラインでも、急な腰痛では、安静にするより活動をなるべく続けるほうが役立つことが示されています。
もちろん、上の受診のサインがある場合や、医師から安静を指示されている場合は別です。そうでなければ、「痛くない範囲で、いつもの生活を続ける」を目安にしてください。
家でできる、腰を守る動き方
日本整形外科学会では、腰痛の予防として、中腰を避けるなど日常の姿勢に気をつけることと、腰を支える力をつける運動や体操を続けることがすすめられています。現場で家族にお伝えしていることをまとめます。
- 床の物を拾うとき:腰だけを曲げず、ひざを曲げてしゃがむ
- 物を持つとき:体に近づけて持つ。持ったまま体をひねらない
- 起き上がるとき:いったん横向きになり、腕で押して起きる
- 立ち上がるとき:浅く座り、足を引いて、おじぎをしてから立つ
- 同じ姿勢を続けない:長く座ったら、ときどき立って体を動かす
痛みが強い日だけ腰痛ベルトを使う方法もあります。腰を支える体の力を落とさないための体操は、いすに座ってできるものから始めてください。
背中が丸くなって前かがみで歩くようになった場合は、原因によって見てほしいポイントが違います。
よくある質問
高齢の方の腰痛について、よく調べられている質問をまとめました。
何科を受診すればいいですか。
腰痛は整形外科が基本です。発熱がある、お腹の痛みもある、突然の激しい痛みで冷や汗が出る、といった場合は、内科や救急の受診が必要なこともあります。
温めるのと冷やすの、どちらがいいですか。
状態によって違います。慢性の腰痛では温めると楽になる方も多いですが、転んだあとや急に痛くなったときは、骨折などが隠れていることもあります。迷う場合は、医師に確認してください。
腰痛ベルト(コルセット)は着けたほうがいいですか。
痛みが強いときや、腰に負担のかかる作業をするときには役立ちます。一方で、いつも着けていると腰まわりの筋肉を使わなくなることもあります。着ける日と外すタイミングを決めて使うのがおすすめです。
腰痛があっても散歩していいですか。
受診のサインがなく、痛みが強くならない範囲なら、歩くことはおすすめです。歩くと足がしびれる場合は、腰部脊柱管狭窄症のこともあるので、休みながら歩き、一度受診してください。
湿布や痛み止めで様子を見てもいいですか。
受診のサインがない軽い腰痛なら、様子を見ることもあります。ただ、痛みが続く、だんだん強くなる、いつもと違うと感じるときは、自己判断で続けず受診してください。
まとめ
最後に、この記事のポイントです。
- 高齢の方の腰痛は、変形性脊椎症・脊柱管狭窄症・圧迫骨折が多い
- 安静でも軽くならない、発熱、足のしびれや力が入らない、尿もれはすぐ受診
- 突然の激しい痛みで冷や汗が出るときは救急へ
- 受診のサインがなければ、寝てばかりにならず、いつもの生活を続ける
- 中腰を避ける・体に近づけて持つ・ひねらないで腰を守る
「年だから」で片づけず、いつもと違う腰痛に気づくことが、大きな病気やけがを防ぐ一歩です。まずは、親の腰痛がいつ、どんなときに強くなるのかを聞いてみてください。
参考にした資料
この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。痛みの原因は人によって異なるため、気になる症状がある場合は医療機関を受診してください。




