サルコペニアとは|高齢の親の筋肉の衰えに気づく3つのチェックと予防

「母の脚が、前より細くなった気がする」「父がいすから立ち上がるとき、手をつくようになった」。こうした変化は、年齢のせいだけでなく、サルコペニアという状態かもしれません。

サルコペニアは、年齢とともに筋肉が減り、筋力が落ちる状態です。訪問リハビリの現場でも、筋肉が落ちたことで、立ち上がりや歩くことが急に大変になった方によく出会います。ただ、筋肉は何歳からでも鍛えられます。早く気づくことが大切です。

この記事で分かること

  • サルコペニアとは何か、どんな影響があるか
  • 家でできる、筋肉の衰えのセルフチェック
  • 最新の診断基準(AWGS 2025)のポイント
  • サルコペニアを防ぐ、運動と食事の工夫

よくある場面

訪問先では、「入院して、帰ってきたら歩けなくなっていた」「夏の暑さで外に出なかったら、脚が弱った」という相談があります。数週間、体を動かさなかっただけで、立ち上がりに手すりが必要になる方もいます。

寝込んだあとに体が弱る「廃用症候群」については、廃用症候群とは|寝込んだあと弱る前に、家族が気づきたいサインと防ぎ方で書いています。

また、「食が細くなって、痩せてきた」という話もよく聞きます。体重が減るとき、脂肪だけでなく筋肉も一緒に減っていることが多いです。

サルコペニアとは、筋肉が減って筋力が落ちる状態

健康長寿ネット(長寿科学振興財団)では、サルコペニアを、年齢による筋肉量の減少と、筋力の低下のことと説明しています。2016年には国際的な病気の分類にも登録され、正式な病気として扱われるようになりました。

筋肉の量は40歳ごろから少しずつ減り、70歳を過ぎたころから自覚するようになるとされています。65歳以上の約15%がサルコペニアにあたると推定されていて、年齢が上がるほど多くなります。

サルコペニアで起きること

サルコペニアになると、歩く、立ち上がるといった日常の基本の動きがしにくくなり、介護が必要になったり、転びやすくなったりするとされています。

現場の感覚では、最初に目立つのはいすや床、浴槽からの立ち上がりです。立ち上がりは、脚の筋肉の力を一番使う動きのひとつだからです。

家でできる、サルコペニアのセルフチェック

サルコペニアかどうかの診断は医療機関で行いますが、家でも気づくきっかけになるチェックがあります。

サルコペニアのセルフチェック:指輪っかテストでふくらはぎに隙間ができる、ふくらはぎの太さが男性34cm・女性33cm未満、握力が男性28kg・女性18kg未満

1. 指輪っかテスト

東京大学高齢社会総合研究機構の研究から生まれた、ふくらはぎの太さを指で確かめる方法です。西東京市のページなどで紹介されています。

  • 膝が直角に曲がる高さのいすに座り、足の裏を床につける
  • 両手の親指と人差し指で輪っかを作る
  • 利き足ではないほうの、ふくらはぎの一番太いところを囲む

囲めない場合は危険度が低く、ちょうど囲める場合は中くらい、隙間ができる場合は危険度が高いとされています。危険度が高いほど、転倒や骨折の危険も高まるとされています。

2. ふくらはぎの太さを測る

最新の診断基準(AWGS 2025)では、サルコペニアの疑いがある人を見つける方法として、ふくらはぎの太さ(下腿周囲長)が使われています。目安は、男性34cm未満、女性33cm未満です。メジャーがあれば、ふくらはぎの一番太いところを測ってみてください。

3. 握力

握力は、サルコペニアの診断に使われる大事な項目です。AWGS 2025では、65歳以上で男性28kg未満、女性18kg未満が、握力が弱い目安とされています。

家に握力計がない場合は、ペットボトルのふたが開けにくくなった、雑巾がしっかり絞れない、といった様子が気づくきっかけになります(現場の見方です)。

最新の診断基準「AWGS 2025」のポイント

日本を含むアジアでは、アジアのサルコペニアの作業部会(AWGS)が作った診断基準が使われています。2025年11月に新しい基準(AWGS 2025)が発表され、日本サルコペニア・フレイル学会が内容を紹介しています。家族として知っておきたいポイントは次のとおりです。

  • 筋肉の量が少なく、筋力も弱い場合に、サルコペニアと診断する
  • 筋肉の量は、医療機関で専用の機器(DXAやBIA)を使って測る
  • 65歳以上が主な対象だが、50〜64歳で筋肉が気になる人も対象になった(50〜64歳の握力の目安は、男性34kg未満、女性20kg未満)
  • 歩く速さなどの「体の動き」は、診断の項目から外れた

以前の基準(AWGS 2019)では、歩く速さなども診断に使われていました。新しい基準では、筋肉の量と力に絞って判断するように変わっています。

サルコペニアとフレイルの違い

よく似た言葉に「フレイル」があります。サルコペニアは、筋肉の量と力に注目した言葉です。フレイルは、筋肉だけでなく、心の面や、人との関わりといった社会の面も含めた、より広い「弱った状態」を指します。

サルコペニアは、フレイルの原因のひとつと考えられています。筋肉が落ちると動くのがおっくうになり、外出が減り、フレイルが進む、という流れです。

フレイルの5つのチェック項目と予防は、フレイルとは|高齢の親に気づきたい5つのサインと、家族ができる予防で書いています。

骨や関節も含めた、立つ・歩く力の衰え(ロコモ)については、ロコモとは|高齢の親の「立つ・歩く」の衰えに気づく7つのチェックと予防で書いています。

サルコペニアを防ぐ、運動と食事

健康長寿ネットでは、予防の柱として運動と栄養が挙げられています。ここからは、訪問リハビリの現場で家族にお願いしていることも合わせてまとめます。

運動は、軽いものから始めて、筋肉に負荷をかける運動へ

健康長寿ネットでは、まずはウォーキングやラジオ体操など、無理なく始められる軽い運動から始め、慣れてきたら、筋肉に負荷をかける運動(レジスタンス運動)に進むことがすすめられています。

家でできる負荷のかかる運動として、現場でよくお願いするのは、いすからの立ち上がりです。テーブルに手を添えながら、ゆっくり立って、ゆっくり座る。これを数回くり返すだけでも、太ももやお尻の筋肉を使います。ふらつきやすい方は、必ずつかまれる場所で行ってください。

食事は、たんぱく質を意識する

筋肉のもとになるのは、たんぱく質です。健康長寿ネットでは、肉や魚などの動物性たんぱく質が役立つとされています。また、プリンやどら焼きなど、卵や牛乳、大豆を使ったおやつにもたんぱく質が含まれている、という工夫も紹介されています。

食が細い方は、一度にたくさん食べるより、おやつや間食でたんぱく質を足すほうが続けやすいと思います。

記録をつけて、続ける

健康長寿ネットでは、カレンダーにその日の歩数を記録するなど、記録をつけて続けることがすすめられています。歩数の見方は、こちらで書いています。

こんなときは、早めに相談を

次のような場合は、かかりつけ医に相談してください。

  • セルフチェックで、当てはまる項目がある
  • 理由が分からないまま、体重が減っている
  • いすや浴槽から、手をつかないと立てなくなった
  • 転ぶことや、ふらつくことが増えた
  • 入院や体調不良のあと、明らかに脚が弱った

ふらつきや転倒が増えている場合は、骨の状態にも注意が必要です。

筋力をつける運動を始めたいけれど、何をすればいいか分からない場合は、リハビリの専門職に相談する方法もあります。

食事でむせて食べる量が減ると、筋肉も落ちやすくなります。むせにくい食事の姿勢は、こちらで書いています。

筋肉を落とさないために家でできる体操は、こちらで書いています。

よくある質問

サルコペニアについて、よく調べられている質問をまとめました。

サルコペニアは治りますか。

筋肉は、年齢を重ねてからでも運動と栄養で鍛えることができます。どのくらい戻るかは人によって違うので、かかりつけ医やリハビリの専門職に相談しながら続けてください。

サルコペニアは何科で診てもらえますか。

まずはかかりつけ医に相談してください。筋肉の量を測る機器がある医療機関を紹介してもらえることがあります。

指輪っかテストで隙間ができました。どうすればいいですか。

指輪っかテストは、気づくきっかけのための簡単なチェックです。隙間ができた場合は、かかりつけ医に相談し、運動や食事を見直すきっかけにしてください。

サルコペニアとフレイルの違いは何ですか。

サルコペニアは、筋肉の量と力が落ちた状態を指します。フレイルは、筋肉だけでなく、心の面や社会の面も含めた、より広い「弱った状態」です。サルコペニアは、フレイルの原因のひとつとされています。

痩せている人だけがなりますか。

体格に関係なく起こります。体重が多い方でも、筋肉が少なく脂肪が多い場合があります。新しい診断基準でも、体格を考えて筋肉の量を判断する方法が取り入れられています。

まとめ

最後に、この記事のポイントです。

  • サルコペニアは、年齢とともに筋肉が減り、筋力が落ちる状態
  • 65歳以上の約15%にあたると推定され、転倒や介護の原因になる
  • 家では、指輪っかテスト、ふくらはぎの太さ、握力で気づける
  • 最新の基準(AWGS 2025)では、筋肉の量と力で診断する
  • 予防は、軽い運動から負荷のかかる運動へ、そしてたんぱく質

筋肉は、何歳からでも鍛えられます。まずは、親と一緒に指輪っかテストをしてみてください。気になる結果が出たら、それが運動や食事を見直すきっかけになります。

気になる変化がある場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターにご相談ください。

あわせて読みたい記事です。


参考にした資料

この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。

  • 健康長寿ネット(長寿科学振興財団)「サルコペニアとは」(リンク)
  • 健康長寿ネット(長寿科学振興財団)「サルコペニアの予防・治療」(リンク)
  • 日本サルコペニア・フレイル学会「新しいサルコペニアの診断基準(AWGS 2025)のお知らせ」(リンク)
  • 西東京市「やってみよう!指輪っかテスト」(リンク)
理学療法士 山下康希

この記事を書いた人

山下 康希|理学療法士
回復期リハビリテーション病院を経て、いまは訪問リハビリでご自宅に伺っています(ひと月およそ120件)。現場で見てきたことと公的な資料をもとに、転倒予防・痛み・住まいの工夫・介護保険など、ご家族が今日から試せることを書いています。

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