「杖だけでは、歩くのが不安そう」「シルバーカーと歩行器は何が違うの?」。親の歩き方が不安定になってくると、次に考えるのが歩行器です。
歩行器は、杖より体をしっかり支えられる一方で、種類が多く、合わないものを選ぶとかえって歩きにくくなる道具でもあります。訪問リハビリで歩行器を選ぶ場面に立ち会ってきた理学療法士の立場から、家族が知っておきたい選び方をまとめます。
この記事で分かること
- 杖・シルバーカー・歩行器の違い
- 歩行器の4つの種類と、それぞれが向く人
- 高さの合わせ方と、家の中で使う前に見たいこと
- 介護保険でのレンタルと購入
よくある場面
訪問先で実際にあるのが、ご家族が「しっかりしたものを」と大きな歩行器を用意したものの、廊下の曲がり角やトイレの入口で向きを変えられず、家の中では使われていない、というケースです。
反対に、本当は体を支える歩行器が必要な方が、買い物用のシルバーカーを歩行器の代わりに使っていることもあります。シルバーカーは体重を預ける作りではないものが多く、体重をかけたときに前に進みすぎてしまいます。
一方で、体に合った歩行器を使い始めてから、家の中で動けるようになった方や、外に出る回数が増えた方もいます。道具は、体の状態と使う場所の両方に合ったときに、はじめて役に立ちます。
杖・シルバーカー・歩行器の違い
- 杖:片手で持ち、体を少し支える。バランスを補う道具
- シルバーカー:自分で歩ける方が、荷物を運んだり休んだりするための道具。体重を預けて支える作りではないものが多い
- 歩行器:両手で持ち、体重を支えながら歩くための道具。杖より支える力が大きい
健康長寿ネットでも、シルバーカーは多くの高齢者に使われているものの、一般に公的な助成の対象にはなっていないと説明されています。歩くのに体を支える必要があるなら、シルバーカーではなく歩行器を検討してください。
歩行器の4つの種類と、向く人
歩行器は、大きく分けて車輪のないものと車輪のあるものがあります。

1. 固定型(持ち上げ型)
フレーム全体を持ち上げて前に置き、そこへ一歩ずつ進むタイプです。車輪がないので、置いたときの安定感があります。歩行器を持ち上げられる腕の力が必要です。
2. 交互型
フレームの左右を交互に前へ出して進むタイプです。全体を持ち上げなくてよいので、腕の力が弱い方でも使いやすい一方、左右を交互に動かす動作に慣れが必要です。
3. 前輪付き
前の脚だけに車輪がついていて、押して進めるタイプです。後ろの脚は床につくので、押しすぎて前に進みすぎるのを防ぎやすくなります。
4. 四輪(歩行車)
4つの脚すべてに車輪がついたタイプで、押して歩きます。ハンドルを握るとブレーキがかかるものや、座面つきのものもあります。歩く距離が長い方や屋外で使う方に向きますが、体重をかけたときに前に進みやすいので、ブレーキを確実に使えるかを確かめてください。
ひじを置いて体を支える、ひじ置き付きの歩行車もあります。どの種類が合うかは、体の状態によって変わります。
高さの合わせ方

歩行器の高さは、歩きやすさを大きく左右します。現場で使っている目安です。
- 靴をはいて、歩行器の中にまっすぐ立つ
- 腕を自然に下ろしたときの、手首あたりの高さにグリップを合わせる
- グリップを握ったとき、ひじが軽く曲がるくらいが目安
- 高すぎると肩が上がり、低すぎると前かがみになる
体の状態によって合う高さは変わるので、最初は専門職と一緒に合わせるのがおすすめです。
家の中で使う前に見たいこと
歩行器は、使う場所に合っていないと使われなくなります。家の中で使う場合は、次の点を見てください。
- 敷居・段差:車輪がひっかからないか。訪問先で、歩行器が一番引っかかりやすいのは敷居です
- 廊下の幅:歩行器の幅より余裕があるか
- 曲がり角:トイレや寝室の入口で向きを変えられるか
- 床:じゅうたんやマットで車輪が重くならないか
- 置き場所:ベッドの横やトイレの前に置いておけるか
段差が多い家では、歩行器より手すりが合うこともあります。住宅改修で手すりをつける方法もあるので、あわせて検討してください。
介護保険でのレンタルと購入
健康長寿ネットによると、要介護認定で要支援1以上を受けている場合、歩行器は介護保険を使って1割負担(所得により2〜3割)でレンタルできます。
また、2024年4月から、車輪のない歩行器(固定型・交互型)などは、レンタルか購入かを選べるようになりました。厚生労働省の通知では、購入の対象になる歩行器は、脚がすべて杖先ゴムなどの形の固定型または交互型で、車輪やキャスターがついた歩行車は除くとされています。
体の状態が変わりやすい時期は、合わなくなったら交換しやすいレンタルから試すのがおすすめです。レンタルの流れや、ほかにレンタルできる用具は、こちらで書いています。
歩行器を使っても不安定な場合は、ふらつきの原因を見直すことも大切です。家で歩く練習をしたい場合は、訪問リハビリも使えます。
歩行器とあわせて、足もとの靴も見直してみてください。
よくある質問
歩行器について、よく調べられている質問をまとめました。
歩行器とシルバーカー、どちらがいいですか。
体を支える必要があるなら歩行器、自分で歩けて荷物を運びたいならシルバーカーが目安です。シルバーカーは体重を預ける作りではないものが多いので、ふらつきがある方は歩行器を検討してください。
歩行器は通販で買っても大丈夫ですか。
買うこともできますが、高さや大きさ、家の中で使えるかを確かめてから選ぶのがおすすめです。介護保険が使える方は、福祉用具専門相談員に相談し、実際に試してから決められるレンタルが安心です。
家の中と外で、同じ歩行器を使えますか。
使える場合もありますが、家の中は狭い場所での小回り、外は段差や坂道で安定して進めることが大切で、合う種類が違うことがあります。使う場所を伝えて相談してください。
歩行器を使うと、歩く力が落ちませんか。
歩行器で安全に歩ける距離が増えれば、体を動かす量はむしろ増えます。転ぶのが怖くて歩かなくなるほうが、歩く力は落ちやすくなります。
介護保険のレンタル料はいくらですか。
種類や事業所によって違います。1割負担の場合の金額を、ケアマネジャーや福祉用具の事業所に確認してください。
まとめ
最後に、この記事のポイントです。
- 体を支える必要があるなら、シルバーカーではなく歩行器
- 種類は固定型・交互型・前輪付き・四輪(歩行車)の4つ
- 高さは、腕を下ろしたときの手首あたりが目安
- 家の中で使うなら、廊下の幅・曲がり角・段差を先に見る
- 介護保険で要支援1からレンタルできる。車輪のない歩行器は購入も選べる
歩行器は、合うものを選べば、行ける場所を広げてくれる道具です。まずは、親がどこで、どんなふうに歩きたいのかを話し合うところから始めてみてください。
参考にした資料
この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。介護保険の細かな取り扱いは市区町村によって異なる場合があるため、ケアマネジャーや市区町村の窓口に確認してください。




