高齢の親の食が細くなった|低栄養のサインと、家でできる4つの工夫

「最近、親の食事の量が減ってきた」「前より痩せて、服がゆるくなったみたい」。高齢の親の食が細くなったことに気づいて、心配になる家族は少なくありません。

高齢の方では、食べる量が少しずつ減って、気づかないうちに低栄養になっていることがあります。低栄養は、筋力の低下や転倒、病気の治りにくさにもつながります。訪問リハビリで、体の動きと一緒に食事の様子も見てきた理学療法士の立場から、家族が気づきたいサインと、家でできる工夫をまとめます。

この記事で分かること

  • 高齢の方が低栄養になりやすい理由
  • 家族が気づきたいサイン
  • 低栄養が体に与える影響
  • 家でできる4つの工夫

よくある場面

訪問先では、一人暮らしの方が、パンやおにぎりなど手軽なものだけで食事をすませていることがあります。買い物や料理がおっくうになり、気づくと、肉や魚、卵などをほとんど食べていないこともあります。

また、入院や体調をくずしたあとに食欲が戻らず、体重が減ったままになっている方もいます。動く量が減ると、さらにお腹がすかなくなり、悪循環に入ってしまいます。反対に、入院して体重が増えて帰ってくる方もいて、食事の変化は人それぞれです。

高齢の方が低栄養になりやすい理由

健康長寿ネットでは、高齢の方の低栄養には、体・暮らし・気持ちのいろいろな要因が関わるとされています。

  • 体の要因:筋力の低下や足の痛みで買い物に行きにくい、かむ・飲みこむ力の低下、消化や吸収のはたらきの低下
  • 暮らしの要因:一人暮らし、買い物の不便さで手軽な食品にかたよる、経済的な事情
  • 気持ちの要因:家族やペットとの別れ、体の衰えによる気持ちの落ちこみで食欲が出ない

同じく健康長寿ネットでは、65歳以上の方のうち、低栄養の傾向(BMI20以下)の方は男性で12.4%、女性で20.7%と紹介されています。85歳以上では男性17.2%、女性27.9%と、年齢とともに増える傾向があります。

家族が気づきたいサイン

こんな変化があったら注意

  • 体重が減った:健康長寿ネットでは、6か月で2〜3kgの減少、または1〜6か月で3%以上の減少が目安とされている
  • 服やベルトがゆるくなった、指輪が回るようになった
  • 食事を残すことが増えた、食事の回数が減った
  • 肉・魚・卵・大豆製品などをあまり食べていない
  • 疲れやすい、歩くのが遅くなった

BMIは「体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)」で計算できます。健康長寿ネットでは、BMI18.5未満は「やせ」とされています。ただ、数字だけでなく、前と比べて減っているかを見ることが大切です。

低栄養が体に与える影響

健康長寿ネットでは、低栄養になると、感染症にかかりやすくなる、床ずれができやすくなる、傷が治りにくくなる、筋肉がやせるといった影響があるとされています。

筋肉が減ると体を動かす量が減り、食欲が落ちて、さらに栄養が足りなくなる、という悪循環に入りやすくなります。これが続くと、心と体が弱っていくフレイルにつながります。

家でできる4つの工夫

健康長寿ネットの対策をもとに、家族と一緒にできる工夫を4つにまとめました。

低栄養を防ぐ4つの工夫:1 体重を月に1回はかる、2 毎食たんぱく質を1品、3 1日3食を食べやすく、4 誰かと一緒に食べる

1. 体重を月に1回はかる

低栄養は、ゆっくり進むので気づきにくいのが特徴です。月に1回、同じ時間帯に体重をはかって記録しておくと、変化に早く気づけます。カレンダーに書きこむだけでもかまいません。

2. 毎食、たんぱく質を1品

健康長寿ネットでは、肉・魚・卵・乳製品・大豆製品などのたんぱく質を、毎食1品とることがすすめられています。たくさん作る必要はなく、ゆで卵、納豆、豆腐、ヨーグルト、チーズ、魚の缶詰など、手軽なもので十分です。

3. 1日3食、食べやすく

1日3食を基本に、決まった時間に食べると、生活のリズムが整います。一度にたくさん食べられない方は、量を少なめにして回数を増やす、かみやすく調理する、などの工夫も役立ちます。むせやすい方は、食べる姿勢も見直してみてください。

4. 誰かと一緒に食べる

健康長寿ネットでは、人と交流しながら楽しく食事をすることも、低栄養の予防として紹介されています。家族との食事のほか、デイサービスや地域の会食の場を活用するのもひとつの方法です。

体を動かすことも大切

体を動かすとお腹がすき、食べたものが筋肉になりやすくなります。食事の工夫と一緒に、いすに座ってできる体操や、短い散歩などを続けてみてください。

よくある質問

高齢の方の低栄養について、よく調べられている質問をまとめました。

太っている親でも低栄養になりますか。

体重が多くても、たんぱく質などが足りず、筋肉が減っていることがあります。体重の数字だけでなく、食事の内容や、歩く力・立ち上がる力の変化も見てください。

栄養補助食品は使ったほうがいいですか。

健康長寿ネットでも、低栄養の対策として栄養補助食品の活用が紹介されています。食事だけで足りないときに役立ちますが、持病がある方は、使う前に主治医に相談してください。

食欲がないと言われたら、どうすればいいですか。

好きなものを少しずつ、食べられるときに食べてもらうことから始めます。急に食欲がなくなった、体重が急に減った、という場合は、病気が隠れていることもあるので受診してください。

入れ歯が合わず、かみにくそうです。

かみにくいと、やわらかいものばかりになり、たんぱく質や野菜が不足しがちです。歯科で入れ歯を調整してもらうと、食べられるものが増えることがあります。

どこに相談すればいいですか。

かかりつけ医のほか、地域包括支援センターでも相談できます。管理栄養士の訪問や、配食サービスなどを紹介してもらえることもあります。

まとめ

最後に、この記事のポイントです。

  • 高齢の方の低栄養は、体・暮らし・気持ちのいろいろな要因で起こる
  • 6か月で2〜3kgの体重減少は注意のサイン
  • 低栄養は、筋肉の減少や感染症、床ずれにつながり、フレイルの原因に
  • 体重を月1回はかる、毎食たんぱく質を1品、1日3食、誰かと一緒に食べる
  • 急な体重減少や食欲低下は受診を

食事は、毎日の元気のもとです。まずは、親の体重を一度はかって、前と比べてみてください。


参考にした資料

この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年10月確認)。持病があり食事の制限を受けている方は、医師や管理栄養士の指示にしたがってください。

  • 健康長寿ネット(長寿科学振興財団)「高齢者の低栄養」(リンク)
理学療法士 山下康希

この記事を書いた人

山下 康希|理学療法士
回復期リハビリテーション病院を経て、いまは訪問リハビリでご自宅に伺っています(ひと月およそ120件)。現場で見てきたことと公的な資料をもとに、転倒予防・痛み・住まいの工夫・介護保険など、ご家族が今日から試せることを書いています。

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