変形性膝関節症の歩き方|膝をかばう3つのくせと負担を減らすコツ

「母が変形性膝関節症と言われた。歩いたほうがいいのか、休ませたほうがいいのか分からない」。膝の痛みを抱える親を見て、どう歩けばいいのか迷う方は多いと思います。

訪問リハビリの現場で膝が痛い方の歩き方を見ると、多くの方に痛い膝をかばう、いくつかのくせがあります。かばうのは自然なことですが、くせが強くなると、反対の脚や腰に負担が回ったり、転びやすくなったりします。

この記事で分かること

  • 変形性膝関節症で痛みが出やすい場面
  • 家族が見て分かる、膝をかばう歩き方の3つのくせ
  • 膝に負担の少ない歩き方と、どのくらい歩いていいかの目安

よくある場面

膝の痛みの相談は、「朝、歩き始めが痛い」「階段の下りがつらい」「長く歩くと膝が腫れる」といった話から始まることが多い印象です。

お宅で歩いてもらうと、痛い脚にはすぐに体重をかけず、反対の脚でさっと体を運ぶ歩き方をしている方をよく見ます。本人は気づいていないことも多く、「特に変わった歩き方はしていない」と言われることもあります。

変形性膝関節症は「動き始め」が痛い

日本整形外科学会によると、変形性膝関節症は、関節の軟骨の老化によることが多く、肥満や素因も関わるとされています。男女比は1対4で女性に多く、年齢が上がるほど多くなります。主な症状は、膝の痛みと、膝に水がたまることです。

症状の進み方は、次のように説明されています。

  • 初期:立ち上がりや歩き始めなど、動作の始めだけ痛み、休めば痛みがとれる
  • 中期:正座や階段の上り下りがつらくなる
  • 末期:じっとしていても痛みがとれず、変形が目立ち、膝がピンと伸びず、歩くのが難しくなる

つまり、特に初めのうちは、歩き始めと、立ち上がりの場面が一番つらいということです。歩き方の工夫も、この場面を中心に考えると分かりやすくなります。

家族が見て分かる、膝をかばう3つのくせ

ここからは、訪問リハビリの現場で歩き方を見るときの見方です。家の中で少し歩いてもらい、前と横から見てください。

膝をかばう歩き方 3つのくせ:体が左右に揺れる、膝が伸びきらない、歩き始めがぎこちない

1. 体が左右に揺れる

痛い脚で体を支える時間を短くしようとして、体が左右に大きく揺れる歩き方です。痛い脚に体重が乗る瞬間に、上半身がその脚の側に傾くことが多い印象です。

かばうこと自体は自然ですが、この揺れが大きいと、反対の膝や腰に負担が回りやすくなります。杖を使うと、この揺れが小さくなる方が多いです。

2. 膝が伸びきらない

膝を曲げたまま着地し、曲げたまま体重を支えている歩き方です。横から見ると、脚が伸びる瞬間がほとんどありません。

膝を曲げたまま体重を支えると、太ももの前の筋肉に大きな力が必要になり、疲れやすくなります。膝が伸びにくい状態が続くと、上半身が前に出て前かがみになることもあります。前かがみの見分け方は、こちらで書いています。

3. 歩き始めがぎこちない

座っていたところから立ち上がって、最初の数歩だけ、足を引きずるように歩く様子です。数歩歩くと少しずつ普通の歩き方に戻ります。

変形性膝関節症の初期によく見られる、動き始めの痛みと重なります。ここは、次に書く「足踏み」で楽になることがあります。

膝に負担の少ない歩き方

日本理学療法士協会の「理学療法ハンドブック 変形性膝関節症」では、日常生活の工夫として、次のようなことが紹介されています。

歩き始める前に、少し足踏みをする

ハンドブックでは、少し足踏みをしてから歩き始めることがすすめられています。立ち上がってすぐに歩き出さず、その場で何回か足踏みをしてから一歩目を出すと、歩き始めの痛みがやわらぐ方がいます。

現場では、立ち上がったあとに、手すりや家具につかまったまま足踏みをしてもらうことが多いです。ふらつきやすい方は、必ずつかまれる場所で行ってください。

杖は、痛い膝と反対の手に持つ

ハンドブックでは、痛みがある側と反対の手に杖を持つと有効だとされています。右膝が痛いなら、杖は左手です。杖の長さの合わせ方は、こちらで書いています。

階段は、上りは痛くない脚から、下りは痛い脚から

階段では、上りは痛くない脚を先に、下りは痛い脚を先に出すとされています。上るときは力の出せる脚で体を持ち上げ、下りるときは痛い脚を先に下ろして、痛くない脚で体を支えます。手すりがあれば、必ずつかまってください。

靴の中に足底板を入れる

ハンドブックでは、靴の中に足底板を入れて、体重のかかる位置を変えることで、歩くときの症状がやわらぐとされています。日本整形外科学会も、治療のひとつとして足底板や膝装具を挙げています。合うものは膝の状態で変わるので、整形外科で相談してください。

どのくらい歩いていいのか

膝が痛いと、「歩いたほうがいいのか、休ませたほうがいいのか」と迷います。日本整形外科学会では、治療のひとつとして、太ももの前の筋肉を鍛える訓練などの運動療法が挙げられています。

ハンドブックでは、ウォーキングや自転車、水中ウォーキング、太極拳、ラジオ体操などの運動を、30分程度、週2回程度続けることが大切だとされています。

また、歩数計で1日に動いた量を記録し、痛みが強くなったときは、前の日にどのくらい歩いたかを確認して、自分に合った歩数をつかむ方法も紹介されています。歩数の見方は、こちらでも書いています。

「調子がいい日にたくさん歩いて、次の日に膝が腫れる」ということもあるので、歩く量は少しずつ増やしてください。痛みが翌日まで残らない量を目安にすると、続けやすくなります。

暮らしの中で見直せること

日本整形外科学会では、日常生活で次のような点が挙げられています。

  • 太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える
  • 正座をさける
  • 膝をクーラーなどで冷やさず、温めて血行を良くする
  • 洋式トイレを使う
  • 肥満であれば減量する

和式の生活で、床に座る・床から立つ動作が多い方は、椅子やベッドの生活に変えるだけでも膝の負担は減ります。トイレで立ち上がるときに膝が痛む場合は、手すりの位置も見直してみてください。

こんなときは、早めに受診を

次のような場合は、歩き方の工夫より先に、整形外科などの医療機関に相談してください。

  • 膝が急に腫れた、熱を持っている、赤くなっている
  • じっとしていても痛い、夜も痛みで目が覚める
  • 膝が伸びない、曲がらない、途中で引っかかる
  • 転んだあとから痛みが強い
  • 痛みで歩く量が目に見えて減ってきた

特に、急に強い腫れや痛みが出た場合は、様子を見ずに受診してください。

よくある質問

変形性膝関節症の歩き方について、よく調べられている質問をまとめました。

膝が痛いときは、歩かないほうがいいですか。

痛みの強さや膝の状態で変わります。日本整形外科学会や日本理学療法士協会では、太ももの筋肉を鍛えることや、膝に負担の少ない運動を続けることがすすめられています。強い腫れや熱がある場合は、まず受診してください。

杖はどちらの手で持てばいいですか。

痛みがある膝と反対の手で持つのが基本です。右膝が痛い場合は左手で持ちます。

階段を下りるのがつらいです。

下りは痛い脚を先に下ろし、痛くない脚で体を支えるようにします。手すりがあれば必ずつかまってください。それでもつらい場合は、無理に階段を使わず、生活の場所を1階にまとめることも考えてください。

膝に水がたまると言われました。歩いても大丈夫ですか。

水がたまるのは変形性膝関節症の主な症状のひとつです。どのくらい動いてよいかは膝の状態で変わるので、主治医に確認してください。歩いたあとに腫れが強くなる場合は、歩く量を見直してください。

サポーターは使ったほうがいいですか。

日本整形外科学会では、治療のひとつとして膝装具が挙げられています。市販のサポーターも含め、合うかどうかは膝の状態で変わるので、整形外科で相談してください。

まとめ

最後に、この記事のポイントです。

  • 変形性膝関節症は、初めのうちは動き始めが痛い
  • 膝をかばうくせは、体の左右の揺れ・膝が伸びきらない・歩き始めのぎこちなさ
  • 歩き始める前に足踏み、杖は痛い膝と反対の手
  • 階段は、上りは痛くない脚から、下りは痛い脚から
  • 歩く量は、痛みが翌日に残らない量を目安に

まずは、親が立ち上がって歩き出すところを、前と横から見てみてください。どのくせが目立つかが分かるだけで、見直すところがはっきりします。

膝の痛みや歩き方に気になる変化がある場合は、整形外科などの医療機関や地域包括支援センターにご相談ください。

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参考にした資料

この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。

  • 日本整形外科学会「変形性膝関節症」(リンク)
  • 日本理学療法士協会「理学療法ハンドブック シリーズ7 変形性膝関節症」(リンク)
理学療法士 山下康希

この記事を書いた人

山下 康希|理学療法士
回復期リハビリテーション病院を経て、いまは訪問リハビリでご自宅に伺っています(ひと月およそ120件)。現場で見てきたことと公的な資料をもとに、転倒予防・痛み・住まいの工夫・介護保険など、ご家族が今日から試せることを書いています。

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