脳卒中のあと、家で気をつけたいこと|退院後に家族ができる4つのこと

「脳梗塞で入院していた親が、もうすぐ家に帰ってくる」「右手と右足にまひが残っていて、家でどう過ごせばいいか分からない」。脳卒中のあと、家での生活に不安を感じる家族は少なくありません。

脳卒中のあとは、退院してからの過ごし方で、できることを保てるか、少しずつ弱っていくかが大きく変わります。回復期リハビリテーション病院で脳卒中のリハビリに関わり、今は訪問リハビリで退院後の生活を支えている理学療法士の立場から、家族が知っておきたいことをまとめます。

この記事で分かること

  • 脳卒中のあとに残りやすい後遺症
  • 退院後に家族が気をつけたい4つのこと
  • 家でリハビリを続ける方法
  • すぐに救急車を呼ぶべき症状

よくある場面

訪問先でも、退院して家に帰ったあと、家族が心配して何でも手伝ってしまい、本人が自分でできていたことまでしなくなるケースがあります。病院では一人でできていた着替えや歩行が、数か月でできなくなってしまうことがあります。

そういうときは、私からご家族に、ご本人ができることは任せて見守るよう、お伝えしています。

もうひとつは、病院と家の環境の違いでつまずくケースです。病院は手すりが多く、床も平らですが、家には段差や狭い通路があります。病院で歩けていても、家では同じようにいかないことがよくあります。

脳卒中のあとに残りやすい後遺症

健康長寿ネットでは、脳卒中(脳梗塞・脳出血)の多くで、体のまひ、言葉の障害、認知の障害などの後遺症が残るとされています。ほかにも、しびれや感覚の異常などが起こることがあります。

  • 体のまひ:片側の手足が動かしにくい。歩く、立つ、着替えるなどが難しくなる
  • 言葉の障害:うまく話せない、言葉が出てこない、相手の話が分かりにくい
  • 飲み込みの障害:食事や水分でむせやすい
  • 感覚の障害:しびれ、さわった感じが分かりにくい
  • 認知の障害:注意が続かない、物事の手順が分からなくなる

言葉や飲み込みの障害には言語聴覚士、手の使い方や家事の動作には作業療法士も関わります。

退院後に家族が気をつけたい4つのこと

現場で、退院前後に家族にお伝えしていることを4つにまとめました。

脳卒中のあと家族が気をつけたい4つのこと:1 できることは本人にしてもらう、2 転ばない家に整える、3 リハビリを続ける、4 再発を防ぐ(血圧・薬・禁煙)

1. できることは本人にしてもらう

時間がかかっても、本人ができることは本人にしてもらうのが基本です。手伝いすぎると、体を動かす機会が減り、筋力や体力が落ちてしまいます。病院のリハビリ担当者に「どこまで一人でできるか」を聞いておくと、家族も迷わずにすみます。

2. 転ばない家に整える

健康長寿ネットでも、まひによって座る・立つ・歩くが不安定になるため、転倒や骨折に注意が必要とされています。手すり、段差、ベッドの高さ、トイレまでの道を、退院前に確認しておくと安心です。

3. リハビリを続ける

国立循環器病研究センターでは、脳卒中の回復は発症から3〜6か月でゆるやかになるため、早い時期からのリハビリが大切とされています。ただ、退院後も体を動かし続けることで、できることを保ち、生活を広げていくことはできます。

4. 再発を防ぐ

同じく国立循環器病研究センターでは、再発を防ぐために、血圧の管理(130/80mmHg未満が目標)、糖尿病や脂質異常症の管理、心房細動がある方の薬、禁煙と飲みすぎを避けることが挙げられています。薬を自己判断でやめず、通院を続けることが大切です。

家でリハビリを続ける方法

  • 訪問リハビリ:理学療法士などが家に来て、家の環境に合わせた練習をする
  • 通所リハビリ(デイケア):施設に通ってリハビリを受ける
  • 外来リハビリ:病院に通ってリハビリを受ける(期間に決まりがある場合がある)
  • 毎日の生活そのもの:着替え、トイレ、家の中を歩くことも大切な練習

介護保険のサービスを使うには、要介護認定が必要です。入院中に申請しておくと、退院に合わせてサービスを始めやすくなります。

こんなときは、すぐに救急車を

国立循環器病研究センターでは、顔がゆがむ・腕が上がらない・話ができないのうち1つでも当てはまったら、すぐに救急車を呼ぶことがすすめられています。ほかにも、片方の手足のまひやしびれ、ろれつが回らない、急に立てない・歩けない、片方の目が見えない・物が二つに見える、経験したことのない激しい頭痛も注意が必要な症状です。

「いつもと違う」と思ったら、様子を見ずに救急車を呼んでください。

よくある質問

脳卒中のあとの生活について、よく調べられている質問をまとめました。

退院後もよくなりますか。

回復のペースは発症から3〜6か月でゆるやかになるとされていますが、その後も、生活の中で体を動かし続けることで、できることを保ったり、動作が上手になったりすることはあります。反対に、動かないと弱ってしまうので、リハビリを続けることが大切です。

まひした手足は、動かしたほうがいいですか。

医師や理学療法士・作業療法士から教わった方法で、無理のない範囲で動かすことが大切です。肩の痛みが出やすい方もいるので、まひした腕を強く引っぱらないように注意してください。

家族はどこまで手伝えばいいですか。

病院のリハビリ担当者に「一人でできること」「見守りが必要なこと」「手伝いが必要なこと」を分けて聞いておくと分かりやすいです。退院前に、家族も一緒に介助の練習をさせてもらえることもあります。

運動するときに気をつけることはありますか。

健康長寿ネットでは、運動の前に血圧や脈拍、その日の体調を確認して、運動の量を調節することがすすめられています。気分が悪い、胸が痛い、息が苦しいときは、すぐに休んでください。

本人が落ち込んでいて、リハビリをしたがりません。

脳卒中のあとは、気持ちが落ち込むことも少なくありません。無理にすすめるより、本人がしたいこと(庭に出たい、好きなお店に行きたいなど)を目標にすると、続けやすくなります。気になる場合は、主治医にも相談してください。

まとめ

最後に、この記事のポイントです。

  • 脳卒中のあとは、まひ・言葉・飲み込み・感覚・認知に後遺症が残りやすい
  • 退院後は、できることは本人にしてもらう
  • 転ばない家に整えてから退院する
  • リハビリを続け、血圧などを管理して再発を防ぐ
  • 顔・腕・言葉のどれかがおかしいときはすぐ救急車

脳卒中のあとも、準備とリハビリで、家での生活を続けていくことはできます。まずは、病院のリハビリ担当者に「家で一人でできること」を聞くところから始めてみてください。


参考にした資料

この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。後遺症やリハビリの内容は、人によって大きく異なります。担当の医師や専門職に確認してください。

  • 国立循環器病研究センター 病院「脳卒中」(リンク)
  • 健康長寿ネット(長寿科学振興財団)「脳卒中の運動療法とは」(リンク)
理学療法士 山下康希

この記事を書いた人

山下 康希|理学療法士
回復期リハビリテーション病院を経て、いまは訪問リハビリでご自宅に伺っています(ひと月およそ120件)。現場で見てきたことと公的な資料をもとに、転倒予防・痛み・住まいの工夫・介護保険など、ご家族が今日から試せることを書いています。

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