「最近、母が痩せてきた気がする」「父が前より疲れやすくなった」。年齢のせいかなと思いながらも、どこか気になっている方は多いと思います。こうした変化は、フレイルのサインかもしれません。
フレイルは、健康な状態と、介護が必要な状態のあいだにある状態です。大事なのは、早く気づいて手を打てば、元に戻れる可能性があることです。私も訪問先で、体を動かすように声をかけていますが、続けるかどうかは、最後はご本人次第です。だからこそ、ご本人が「やってみよう」と思えるきっかけを、ご家族と一緒につくっていくことが大切です。
この記事で分かること
- フレイルとは何か、どんな状態か
- フレイルかどうかを見る5つの項目と、家で気づけるサイン
- フレイルを予防する、家族ができること
よくある場面
現場で多いのは、「特に病気はないけれど、ここ1年で急に弱った」という相談です。話を聞くと、外出が減った、食事の量が減った、体重が落ちた、といった変化が少しずつ重なっていることがよくあります。
一つひとつは小さな変化なので、本人も家族も「年だから仕方ない」と見過ごしがちです。ただ、こうした変化が重なった状態こそが、フレイルです。
家族が気づくきっかけで多いのは、「外に出なくなった」「前より歩くのが遅くなった」というひと言です。
フレイルとは、健康と要介護のあいだの状態
フレイルは、英語の「Frailty(虚弱)」を日本語にした言葉で、2014年に日本老年医学会が提唱しました。健康長寿ネット(長寿科学振興財団)では、年齢とともに心と体の活力が落ち、生活の働きが損なわれた状態と説明されています。
「虚弱」ではなく「フレイル」という言葉が選ばれたのは、正しく手を打てば戻るという意味を強調するためとされています。フレイルは、健康な状態と、日常生活に支えが必要な介護の状態の、中間の段階です。
フレイルには3つの面がある
フレイルというと、足腰が弱ることを思い浮かべるかもしれません。ただ、フレイルには次の3つの面があるとされています。
- 体の面:体重が減る、筋力が落ちる
- 心の面:気力が落ちる
- 社会の面:人との関わりや外出が減る
この3つはつながっていて、どれか一つが崩れると、ほかも崩れやすくなります。
フレイルかどうかを見る5つの項目
日本では、国立長寿医療研究センターが2020年に改定した「J-CHS基準」が使われています。健康長寿ネットでは、次の5項目が紹介されています。

- 体重減少:6か月で2kg以上の、意図しない体重減少
- 筋力低下:握力が、男性28kg未満、女性18kg未満
- 疲労感:ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする
- 歩行速度:ふつうの速さで歩いて、秒速1.0m未満
- 身体活動:軽い運動や体操、定期的な運動やスポーツを、週に1回もしていない
3つ以上当てはまるとフレイル、1〜2つでプレフレイル(フレイルの手前)、当てはまらなければ健常と判定されます。
家で気づける、フレイルのサイン

握力計や歩く速さの測定は、家ではなかなかできません。ここからは、訪問リハビリの現場の見方として、5つの項目を家の中で見える様子に置きかえてみます。あくまで気づくための目安で、判定は医療機関や地域の窓口で受けてください。
1. 体重が減った
ズボンのウエストがゆるくなった、顔がほっそりした、指輪や腕時計がゆるくなった、といった変化です。体重計に乗る習慣がない方も多いので、服のサイズ感で気づくことがよくあります。
2. 握力が弱くなった
ペットボトルのふたが開けにくい、瓶のふたを家族に頼むようになった、雑巾がしっかり絞れない、といった様子です。
3. 疲れやすくなった
以前より昼寝が増えた、買い物から帰るとすぐ横になる、「疲れた」が口ぐせになった、といった変化です。
4. 歩くのが遅くなった
秒速1.0mは、1秒で1m進む速さです。一緒に歩くと、家族のほうが歩く速さを合わせるようになった、横断歩道を渡るのに時間がかかるようになった、といった形で気づくことが多いです。歩く速さの見方は、こちらでも書いています。
骨や関節も含めた、立つ・歩く力の衰え(ロコモ)の7つのチェックは、ロコモとは|高齢の親の「立つ・歩く」の衰えに気づく7つのチェックと予防で書いています。
5. 体を動かさなくなった
散歩や体操の習慣がなくなった、出かける回数が減った、一日の多くをテレビの前で過ごしている、といった様子です。
このほか、ふらつきや、歩幅が狭くなるといった歩き方の変化も、体が弱ってきたサインのひとつです。
フレイルが進むしくみ
健康長寿ネットでは、フレイルが進むしくみを「フレイルサイクル」として説明しています。年齢や病気で筋肉が減ると、体を動かす量が減り、食欲が落ち、栄養が足りなくなります。栄養が足りないと、筋肉がさらに減り、筋力が落ちる、という悪い流れです。
現場でも、「動かないからお腹がすかない、食べないから動けない」という状態になっている方をよく見ます。予防は、この流れのどこかを断ち切ることです。
家族ができる、フレイルの予防
健康長寿ネットでは、フレイル予防として、持病をきちんと治療すること、運動と栄養をセットで行うこと、感染症を予防すること(ワクチンなど)が挙げられています。ここからは、家族ができることを現場の見方でまとめます。
運動は「今より少し」から
いきなり長い散歩を始めると、膝や腰を痛めて続かなくなることがあります。まずは、今より10分多く体を動かす、いすからの立ち上がりを数回くり返す、といった小さなことから始めるのが続けやすいです。
食事は、たんぱく質を意識する
健康長寿ネットでは、質の良いたんぱく質をとることが大切とされています。肉や魚、卵、大豆製品、乳製品などです。食が細くなった方は、一度にたくさん食べるより、毎食に少しずつたんぱく質の多いものを足すほうが取り入れやすいと思います。
人と関わる機会を残す
フレイルには社会の面もあります。家族との電話、近所の人とのおしゃべり、地域の体操教室など、外に出る用事や人と話す機会を残すことも、予防のひとつです。地域の通いの場や介護予防の教室は、地域包括支援センターで教えてもらえます。
どこに相談すればいいか分からないときは、まず地域包括支援センターへ。役割や探し方は、こちらで書いています。
こんなときは、早めに相談を
次のような場合は、様子を見ずに、かかりつけ医や地域包括支援センターに相談してください。
- 理由が分からないまま、体重が減り続けている
- 食事の量が目に見えて減った
- 急に歩けなくなった、転ぶことが増えた
- 気分が沈んで、何もする気が起きない様子が続いている
- 5つの項目のうち、3つ以上に当てはまりそう
地域包括支援センターでは、介護予防のための「基本チェックリスト」を受けられることがあります。リハビリを受けたい場合の相談先や、受けられる場所については、こちらで書いています。
骨の衰えや、食事のむせについては、こちらで書いています。
寝ている時間が長くなったあとの衰えや、家でできる体操については、こちらで書いています。
よくある質問
フレイルについて、よく調べられている質問をまとめました。
フレイルは治りますか。
フレイルは、正しく手を打てば元に戻る可能性がある状態とされています。運動と栄養をセットで見直すこと、持病をきちんと治療することが大切です。
フレイルとサルコペニアの違いは何ですか。
サルコペニアは、主に筋肉の量や力が落ちた状態を指します。フレイルは、筋肉だけでなく、心の面や社会の面も含めた、より広い「弱った状態」です。サルコペニアは、フレイルの原因のひとつとされています。
プレフレイルとは何ですか。
フレイルの5つの項目のうち、1〜2つに当てはまる状態です。フレイルの手前の段階で、この時期に気づいて予防を始められると、元に戻りやすいと考えられています。
フレイルかどうか、どこで調べてもらえますか。
かかりつけ医に相談するか、お住まいの地域の地域包括支援センターに相談してください。基本チェックリストや、地域の介護予防の取り組みを教えてもらえることがあります。
フレイル予防の運動は、どのくらいすればいいですか。
体の状態で変わります。まずは今より少し体を動かす時間を増やすことから始め、持病がある場合や痛みがある場合は、主治医やリハビリの担当者に相談してください。
まとめ
最後に、この記事のポイントです。
- フレイルは、健康と要介護のあいだの状態で、正しく手を打てば戻る可能性がある
- 体・心・社会の3つの面がある
- 5つの項目は、体重減少・握力低下・疲労感・歩く速さ・運動習慣。3つ以上でフレイル
- 家では、服のゆるさ、ふたの開けにくさ、歩く速さなどで気づける
- 予防は、運動と栄養をセットで。人と関わる機会も残す
「年だから」と思っていた変化の中に、フレイルのサインが隠れていることがあります。まずは、親の服のサイズ感や、一緒に歩いたときの速さを、少し気にかけてみてください。
気になる変化がある場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターにご相談ください。
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この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。




