「立ち上がるときに、ひざが痛いと言う」「階段をゆっくり一段ずつ下りるようになった」。高齢の親のひざの痛みで多い原因のひとつが、変形性膝関節症です。
ひざが痛いと、動くのがおっくうになり、歩く量が減って、足の力がさらに落ちる。この流れを止めることが大切です。訪問リハビリで、ひざの痛みがある方と毎日のように関わっている理学療法士の立場から、家族が知っておきたいことをまとめます。
この記事で分かること
- 高齢者のひざの痛みで多い、変形性膝関節症とは
- 痛みの進み方と、受診の目安
- 家でできる、ひざをいたわる生活の工夫
- ひざを支える筋肉の体操
よくある場面
現場でよくあるのは、「年だから仕方ない」と痛みをがまんして、外に出る回数が減っていくケースです。数か月たつと、ひざの痛みより、足の筋力が落ちて立ち上がれないことのほうが困りごとになっていた、ということもあります。
反対に、痛いからとずっと安静にしているのも、ひざにとってはよくありません。痛みと上手に付き合いながら、動ける範囲を保つことが大切です。
痛みが強い日は無理に歩かず、座ってできる運動に切り替えることで、運動を続けられた方もいます。「痛い日は休む」ではなく「痛い日はメニューを変える」と考えると、動ける範囲を保ちやすくなります。
変形性膝関節症とは
変形性膝関節症は、ひざの関節の軟骨がすり減り、痛みや腫れ、変形が起きる病気です。日本整形外科学会の解説では、関節軟骨の老化によることが多く、肥満や素因(遺伝)も関わるとされています。
痛みの進み方
日本整形外科学会の解説をもとに、進み方を図にまとめます。

はじめは「動き始めだけ痛くて、休めば治まる」ことが多いため、見過ごされがちです。親が「立ち上がりの一歩目」で顔をしかめていないか、気にかけてみてください。
こんなときは、早めに受診を
- 休んでいても痛む、夜も痛む
- ひざが腫れている、熱っぽい
- ひざが伸びない、曲がらない
- 痛みで歩く距離が急に短くなった
- 転んだあとから痛む
診断には、整形外科での診察とレントゲン検査などが必要です。
治療はどんなもの?
日本整形外科学会の解説では、まずは手術をしない治療(保存療法)が行われます。
- 運動療法:太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を鍛える、ひざの動く範囲を広げる
- 薬:痛み止めの飲み薬や、はり薬・塗り薬
- 注射:ひざの関節にヒアルロン酸を注射する
- 温める治療
- 装具:足底板(インソール)や、ひざのサポーター
痛みが強く、生活に大きな支障がある場合は、人工膝関節などの手術が検討されることもあります。どの治療が合うかは、医師とよく相談してください。
家でできる、ひざをいたわる工夫
ここからは、日本整形外科学会や日本理学療法士協会の解説をもとに、訪問リハビリの現場で家族に伝えていることです。
1. 正座を避け、いすの生活に
深く曲げる正座は、ひざに負担がかかります。床に座る生活から、いすとテーブルの生活に切り替えるのがおすすめです。ただし、低すぎるいすは立ち上がるときにひざに負担がかかるので、座面の高さにも気をつけてください。
2. トイレは洋式に
和式トイレは、ひざを深く曲げる姿勢になります。洋式トイレを使い、必要なら手すりをつけると、立ち座りが楽になります。
3. 階段は「上りはよい足から、下りは痛い足から」
日本理学療法士協会の解説では、階段は、上りは痛くないほうの足を先に、下りは痛いほうの足を先に出すとされています。手すりがあれば、必ずつかまってください。
4. 杖は痛い足と反対の手に
杖を使う場合は、痛いほうの足と反対の手に持ちます。杖の選び方や長さの合わせ方は、こちらで書いています。
5. 冷やさず、温める
日本整形外科学会の解説では、ひざを冷やさず、温めて血行をよくすることがすすめられています。夏のクーラーの風が直接当たらないようにする、ひざ掛けを使うなどの工夫ができます。ただし、腫れて熱っぽいときは、医師に相談してください。
6. 体重を見直す
体重が重いと、ひざへの負担が大きくなります。太り気味の場合は、医師と相談しながら、ひざに負担の少ない運動(水中歩行や、いすに座ってできる体操など)と食事の見直しを考えます。
ひざを支える筋肉の体操

ひざを守るうえでいちばん大切なのが、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)です。いすに座ったままできる、簡単な体操を紹介します。
いすに座って、ひざを伸ばす体操
- いすに深く座り、背すじを伸ばす
- 片方のひざを、ゆっくりまっすぐ伸ばす
- 足首を手前に反らし、太ももの前に力を入れて3秒止める
- ゆっくり下ろす。左右それぞれ10回ほどから
日本理学療法士協会の解説では、太ももの前の筋力トレーニングとして、ひざをまっすぐになるまで持ち上げる運動が紹介されています。
体操のときの注意
- 痛みが強くなるときは、無理をせず中止する
- 息を止めずに、ゆっくり行う
- ひざが腫れている、熱っぽいときは行わない
- 続けても痛みが増す場合は、医師や理学療法士に相談する
足の筋肉の衰えについては、ロコモやサルコペニアの記事でも書いています。自分で続けるのが難しい場合は、訪問リハビリなどで専門職に見てもらう方法もあります。
- ロコモとは|高齢の親の「立つ・歩く」の衰えに気づく7つのチェックと予防
- サルコペニアとは|高齢の親の筋肉の衰えに気づく3つのチェックと予防
- 訪問リハビリとは|家に来てくれるリハビリの内容・費用・頼み方
歩くと足がしびれて、休むとまた歩ける場合は、腰が原因のこともあります。こちらも参考にしてください。
ひざに負担をかけにくい、いすに座ってできる体操は、こちらで書いています。
よくある質問
高齢者のひざの痛みについて、よく調べられている質問をまとめました。
ひざが痛いときは、歩かないほうがいいですか。
痛みが強いときは休むことも必要ですが、ずっと安静にしていると、ひざを支える筋肉が弱ってしまいます。痛みが落ち着いている範囲で、少しずつ動くことが大切です。どのくらい動いてよいかは、医師や理学療法士に相談してください。
サポーターはつけたほうがいいですか。
ひざのサポーターや足底板は、治療のひとつとして使われます。合う物は人によって違うので、医師や理学療法士に相談して選ぶのがおすすめです。
ひざは冷やすのと温めるの、どちらがいいですか。
日本整形外科学会の解説では、変形性膝関節症では冷やさずに温めて血行をよくすることがすすめられています。ただし、急に腫れて熱をもっている場合は、医師に相談してください。
何科を受診すればいいですか。
整形外科を受診してください。診察とレントゲン検査などで、原因を調べてもらえます。
正座はもうしないほうがいいですか。
正座はひざを深く曲げるため、負担が大きい姿勢です。痛みがある場合は、いすに座る生活に切り替えるのがおすすめです。
まとめ
最後に、この記事のポイントです。
- 高齢者のひざの痛みで多いのが、軟骨がすり減る変形性膝関節症
- はじめは動き始めだけ痛む。休んでも痛む、腫れる場合は整形外科へ
- 正座を避け、いす・洋式トイレの生活に
- 階段は上りはよい足から、下りは痛い足から。杖は痛い足と反対の手に
- 太ももの前の筋肉を、痛みのない範囲で鍛える
ひざの痛みがあっても、工夫しだいで動ける範囲は保てます。「年だから」とあきらめず、親の一歩目の様子を見守ってあげてください。
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参考にした資料
この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。痛みの原因や治療は人によって異なるため、気になる症状がある場合は医師に相談してください。




