高齢者が転ぶ原因|家族が見直したい「体・家・動き方」の3つ

「何もないところでつまずいた」「夜中にトイレに行こうとして転んだ」。高齢の親の転倒は、けがだけでなく、そのあとの暮らしを大きく変えてしまうことがあります。

訪問リハビリの現場で転倒の相談を受けていると、原因はひとつではなく、体・家・動き方の3つが重なって起きていることがほとんどです。そこに、薬の影響が加わっていることもあります。この記事では、転ぶ原因を3つに分けて、家族が見直せることをまとめます。

この記事で分かること

  • 高齢者の転倒が、どこで、どのくらい起きているか
  • 転ぶ原因を「体・家・動き方」に分けた見方
  • 家族が今日から見直せることと、相談の目安

高齢者の転倒は、家の中で多い

東京消防庁の救急搬送データによると、高齢者(65歳以上)の日常生活の事故のうち、「ころぶ」事故が8割以上を占めています(令和2年〜6年の5年間)。

さらに、令和6年に住宅などで起きた「ころぶ」事故をみると、9割以上が屋内で、場所は居室・寝室が最も多く、次いで玄関・勝手口、廊下という順でした。外より、毎日過ごしている家の中のほうが危ないということです。

また、国の国民生活基礎調査(2022年)では、介護が必要になった主な原因として、認知症、脳血管疾患(脳卒中)に次いで骨折・転倒が3番目に多くなっています。

転ぶ原因は、3つが重なる

現場では、転ぶ原因を次の3つに分けて見ています。どれかひとつだけが原因ということは少なく、たいていは重なっています。

転ぶ原因は3つが重なる:1 体(筋力・バランス・病気・薬・視力)、2 家(段差・マット・コード・暗さ・床の物)、3 動き方(急ぐ・夜中のトイレ・スリッパ・高い所)

1. 体の原因

年齢とともに、脚の筋力やバランスの力は落ちていきます。つま先が上がりにくくなると、わずかな段差でもつまずきやすくなります。

  • 筋力・バランスの低下:いすから立つときに手をつく、片脚で立てない
  • 歩き方の変化:歩幅がせまい、すり足、前かがみ
  • 立ちくらみ:立ち上がった直後にふらつく
  • 薬:薬の種類や組み合わせによって、ふらつきやすくなることがある
  • 視力:暗いところで足元が見えにくい

筋肉や、立つ・歩く力の衰えについては、こちらで詳しく書いています。

歩き方やふらつきが気になる場合は、こちらも参考にしてください。

2. 家の原因

毎日暮らしている家には、本人も家族も慣れてしまっていて気づきにくい危険があります。

  • わずかな段差:敷居、カーペットの端、玄関
  • 床の物:新聞、コード、脱いだ服、スリッパ
  • すべりやすい場所:マット、浴室、廊下のワックス
  • 暗さ:夜の廊下やトイレまでの道
  • 手すりがない:立ち上がる場所、段差のある場所

訪問リハビリで家族に一番よくお願いするのは、「手すりをつける前に、床の物を片づけて」ということです。お金をかけずにすぐできて、効果が大きい対策です。

3. 動き方の原因

同じ体、同じ家でも、動き方によって転びやすさは変わります。

  • 急ぐ:電話や玄関のチャイムにあわてて立つ
  • 夜中のトイレ:寝起きでぼんやりし、暗い中を歩く
  • 履き物:スリッパ、かかとのない靴、靴下だけ
  • 高い所の物を取る:踏み台、背伸び
  • 起き上がってすぐ歩く:立ちくらみのまま動き出す

中でも多いのが、夜中のトイレでの転倒です。

家族が今日から見直せること

ここからは、現場で家族にお願いしていることを、すぐできる順にまとめます。

  • 床の物を片づける:通り道に物を置かない、コードは壁に沿わせる
  • 夜の明かりを足す:寝室からトイレまで、足元灯をつける
  • 履き物を変える:スリッパより、かかとのある室内履き
  • 「ゆっくりでいいよ」と声をかける:電話やチャイムで急がせない
  • 立ったら、ひと呼吸おいて歩く:立ちくらみを防ぐ
  • 薬のことを相談する:ふらつきが増えたら、主治医や薬剤師に

杖やシルバーカーを使うときは、合っているかどうかも大切です。

家の手すりや段差の工事、歩行器などの道具を介護保険で用意する方法は、こちらで詳しく書いています。

こんなときは、早めに相談を

次のような様子があれば、かかりつけ医や担当のケアマネジャーに相談してください。

  • この数か月で、何度も転んでいる
  • 転んだあと、痛みが続いている(骨折が隠れていることがあります)
  • 転ぶのが怖くて、外出や家の中の移動を控えるようになった
  • 急にふらつきが強くなった、歩き方が変わった

転んでいなくても、腰や背中の痛みが続く場合は、背骨の骨折が隠れていることがあります。

家の中の危ない場所や、動き方の見直しは、訪問リハビリで専門職と一緒に確認することもできます。

家に来てもらう訪問リハビリの内容や頼み方は、こちらで書いています。

骨が弱くなっていると、転んだときに骨折しやすくなります。骨粗しょう症については、こちらで書いています。

足もとから見直したい場合は、転びにくい靴と室内履きの選び方をこちらで書いています。

よくある質問

高齢者の転倒について、よく調べられている質問をまとめました。

高齢者は、家のどこで転ぶことが多いですか。

東京消防庁の救急搬送データでは、住宅などで起きた「ころぶ」事故の9割以上が屋内で、場所は居室・寝室が最も多く、次いで玄関・勝手口、廊下の順でした。

転ばないために、まず何をすればいいですか。

お金をかけずにすぐできるのは、床の物を片づけること、夜の足元に明かりを足すこと、スリッパをかかとのある室内履きに変えることです。そのうえで、筋力やバランスを保つ運動を続けてください。

一度転んだ親が、動くのを怖がります。

転んだ経験から動くのを控えると、筋力が落ちて、かえって転びやすくなることがあります。無理に動かすのではなく、手すりの位置や動き方を見直して、安心して動ける環境を整えることが大切です。リハビリの専門職に相談するのもおすすめです。

薬で転びやすくなることはありますか。

薬の種類や組み合わせによっては、ふらつきや眠気が出やすくなることがあります。自己判断でやめず、主治医や薬剤師に相談してください。

転んだけれど、痛みが軽い場合も受診したほうがいいですか。

高齢の方は、骨折していても痛みが軽いことがあります。痛みが続く、動きにくい、いつもと様子が違う場合は、早めに受診してください。頭を打った場合は、様子の変化に特に注意してください。

まとめ

最後に、この記事のポイントです。

  • 高齢者の日常生活の事故は、「ころぶ」が8割以上
  • 住宅で起きる転倒の9割以上が屋内。居室・寝室が最も多い
  • 転ぶ原因は、体・家・動き方の3つが重なる
  • まずは、床の物を片づける、夜の明かりを足す、履き物を変える
  • 何度も転ぶ、痛みが続くときは、早めに相談

3つの原因のうち、ひとつ減らすだけでも、転ぶきっかけは減らせます。今日、親の家の床を一度見渡してみるところから始めてみてください。

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参考にした資料

この記事は、次の資料を確認して書いています(2026年9月確認)。

  • 東京消防庁「救急搬送データからみる高齢者の事故」(リンク)
  • 厚生労働省「2022年 国民生活基礎調査」介護が必要となった主な原因(政府統計の総合窓口 e-Stat)(リンク)
理学療法士 山下康希

この記事を書いた人

山下 康希|理学療法士
回復期リハビリテーション病院を経て、いまは訪問リハビリでご自宅に伺っています(ひと月およそ120件)。現場で見てきたことと公的な資料をもとに、転倒予防・痛み・住まいの工夫・介護保険など、ご家族が今日から試せることを書いています。

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